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2014/04/10配信分

グルーバル感覚 経済原論

凡庸な国・日本の少子化問題を考える

先日、シンガポールのリー・クアンユー氏が、中国網に【日本を凡庸な国に変えたのは何か】というコラムを寄稿しました。

 

リー氏は、国の将来を考える場合、日本が直面している最も深刻な課題は人口問題(若い世代の不足)であると指摘しています。この解決策を日本政府高官に見解を求めるも、「産休と出産助成金の確保」という答えに、平凡な国へと向かっていると危機感を示しました。

 

そこで今回の【MBAホルダーの視点】では、少子化問題を取り上げ、その原因と対策を考えてみたいと思います。

 

リー氏が考える解決策とは、ずばり移民政策です。リー氏は、日本に移民という選択肢が出てこないのは、民族の純血維持という考え方がある為であると指摘しています。
果たして、解決策は移民政策だけなのでしょうか?まずは、日本の出生率の推移を見てみましょう。
 
◆出生数と合計特殊出生率*の推移◆
*一人の女性が一生に産む子供の平均数
 
年   出生数 出生率
1940年 212万人 4.12
1950年 270万人 4.32(第1次ベビーブーム)
1960年 161万人 2.00
1970年 193万人 2.13
1973年 209万人 2.14(第2次ベビーブーム)
1980年 158万人 1.75
1990年 122万人 1.54
2000年 119万人 1.36
2010年 107万人 1.39
(出典:厚生労働省「人口動態統計」)
 

これまで日本で出生率が大きく減少した時期は、2度あります。
 

1度目は、人工妊娠中絶(1948年合法化)が急速に普及した1950年代以降。
2度目は、1980年代以降に、高度経済成長期が終わり安定成長期に移行した時期からで、それ以降じりじりと減り続けています。
 

日本だけではなく、少子化問題は、多くの先進国で共通する問題となっています。いずれの国にも共通しているのは、都市化が進み、第3次産業の比率が高い社会ほど、子供が生まれにくいという点です。
 
そのような潮流の中にあって、先進国の中で、スウェーデン、フランス、イギリスは、出生率を大きく改善しています。
 
◆合計特殊出生率の年次推移諸外国との比較◆
※左の出生率は1947年以降の最低数値
 
フランス  :1.66(1994年) →2.00(2012年) +0.34
イギリス  :1.61(2001年) →1.91(2012年) +0.30
スウェーデン:1.50(1999年) →1.90(2012年) +0.40
アメリカ  :1.80(1983年) →1.89(2012年) +0.09
日本    :1.25(2005年) →1.41(2012年) +0.16
シンガポール:1.16(2010年) →1.29(2012年) +0.13
(出典:厚生労働省「我が国の人口動態」平成26年発行)
 

果たして、どの様な施策が講じられたのでしょうか?
 

◆スウェーデン◆
男女機会均等から出発した家族政策や女性解放策によって、結果として少子化を食い止めました。
 

少子化関係のポイントとしては、出産期女性の高い労働力率:84.3%(日本:66.6%)を支える充実した育児休業制度があり、さらには少ない残業時間・通勤時間という特徴と、児童手当等の家族政策に係る財政支出が対GDP比:3.31%(日本:0.47%)と高くなっています。
 

つまり、子供にかかる費用を社会全体で負担する構図となっており、育児休業制度と保育サービスによって、仕事と家庭の両立を可能としているのです。

◆フランス◆
1世紀にわたり少子化に取り組んできており、出産育児問題を一つずつ解決してきました。子供を産めば産むほど有利な社会システムとなっています。
ざっと挙げるだけでも、以下の制度があります。
 
・家族手当(2子以上の養育家庭)
・所得減税(3人以上の子育て世帯)
・家族補足手当(第3子から支給)
・年金加算(3人養育で年金加算)
 
例えば、日本で月給20万円の女性なら、産休14週間で44万円が支給されますが、フランスなら同じ月給で産休16週間で80万円、3人目の子供からは産休26週間で130万円が支給されます。
 
◆イギリス◆
出産/公立学校/医療費/子供服の消費税といった子育て費用に関しては、お金がほとんど掛かりません。さらに、育児家庭に税金還付として「Child Trust Fund」制度があり、毎月250ポンド(約4万3千円)の小切手が送られます。
(18歳になるまで下ろせない。)
 
出生率上昇をもたらした政策として指摘されているのが、勤労世帯税額控除制度です。これは、失業状態に対するインセンティブを減らし、父親と母親の双方が職に就いた方がメリットが大きくなるという施策です。
 
これにより家庭の経済状況が改善し、子供を増やす余裕が生じました。これを支えたのが、働く親が妊娠した場合の休息や休日付与と、妊娠中と出産後の雇用確保と、父親に対して26週間の産休を認めるといった法整備でした。
 

以上から、少子化問題に対する施策を整理すると、大きく3つに分類できます。

(1) 移民制度導入で若い世代の受け入れ
(2) 出産・育児の経済的負担を減らす社会保障制度の整備
(3) 女性が働きながら出産・育児できる様な法整備
 
日本について、1つずつ見ていきましょう。
 

(1)は、少子化問題というよりは、リー氏が指摘している「労働力人口の確保」という観点です。これに関してリー氏は「日本の純血維持」を論じていますが、その前に、移民制度を導入しているフランス、アメリカ、そしてシンガポールについて、人口減少に対して効果があるものの、短期的な出生率の改善には、必ずしもつながっていないとされている点は見逃せません。
 
(2)は、「産助成金の確保」といった各論にとどまらず、社会保障制度の全体像を再構築する必要があります。すぐに対策が講じられるレベルではないと言えるでしょう。
 
(3)は、女性が働きにくい社会から、出産・育児と仕事が両立できる社会へと変革させる必要があります。現在の日本では出産・育児は「自己都合」と見做される風潮があり、まだまだ男女機会均等の考え方が足りません。
 
しかし、前述の先進国3か国が取り組んだように、日本が少子化問題を解決しようとする場合、最も効果が期待できるのは(3)の女性が働きながら出産・育児ができる環境作りなのです。
 
最近、扶養控除の廃止に向けた見直しが進められています。これは、女性が主婦でいる事よりも、働く事に対してインセンティブをシフトさせようとする意図があります。これが女性の労働力率を高め、ひいては少子化問題を改善するきっかけとなって欲しいものです。
 
さて、皆さんは、少子化問題に対して、どの様な対策を考えますか?



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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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