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2013/07/17配信分

ITリテラシー 経営戦略

日本の出版業界が挑む電子書籍へのシフト戦略

先日、『第20回東京国際ブックフェア』の基調講演として、(株)KADOKAWA:角川 歴彦 取締役会長が、「図書館向け電子書籍レンディングシステム」構想を明らかにしました。

 

今回の【MBAホルダーの視点】では、大手出版業界が動き出す電子書籍について、考察を深めていきたいと思います。

 

まずは、電子書籍の歴史をザッと振り返ってみましょう。

 

■第一世代「外部メディア利用型」電子書籍リーダー
1990年 5月:ソニー『データディスクマン』発売

 

■第二世代「コンテンツ内蔵型」電子書籍リーダー
2000年前後:「プロジェクト・グーテンベルク」「青空文庫」登場
(PCダウンロード型)
2003年 7月:パナソニック『シグマブック』発売
2010年12月:シャープ『GALAPAGOS』発売
2012年 7月:楽天『kobo Touch』発売

 

■第三世代「通信経由ダウンロード型」電子書籍リーダー
2007年11月:Amazon『Kindle 1』米国発売
2009年10月:『Kindle 3』グローバル発売
2012年10月:Amazon日本版 Kindleストア開設
2012年11月:『Kindle Fire』日本発売
2013年 3月:Apple『iBookstore』日本語コンテンツ発売開始

 

電子書籍リーダーは、日本が早くから商品化を進めましたが、世界標準には至りませんでした。一方、Amazon『Kindle』は世界標準化に成功し、Appleが追い掛ける構図となっています。

 

角川氏ですが、2011年11月にAmazonと電子書籍販売について交渉していることを明らかにしています。当時、飲めない交渉条件もあるとしていましたが、今回のAmazonに対して危機感と対抗心を表明したのは、この時の交渉が決裂したということでしょう。

 

ここで、今回の発表内容の概要を確認してみましょう。

 

(1)書店をプラットフォーム化して、クラウドに出版社の在庫を集め、店頭で本を閲覧してすぐに注文できる仕組みを作る。
(2)図書館向け電子書籍レンディングシステムを構築する。

 

これらは、出版物専門商社「トーハン」が進めている施策と同じ内容に見えます。「トーハン」が進めるのは、紙の本とデジタルの本の両方を店頭で販売・決裁する仕組みです。カード決済を嫌うユーザーに、店頭で決済してバウチャーを渡し、自宅でダウンロードします。他にも、書店で電子書籍を立ち読みできるようにする構想もあります。

 

「トーハン」の主要株主には、「角川書店」と今回の協力者として発表された「講談社」「小学館」「集英社」も名前を連ねているので、実質的に「トーハン」の施策を後押しするものになると思われます。

 

そして注目すべきは、2つ目の図書館向け構想です。

 

米国では、電子図書館事業は、国家的情報戦略の重要分野と位置付けられ、1993年「国家情報インフラストラクチャ」プログラムの中で取り上げられています。2012年末時点で約9,000ある公立図書館のうち66%が電子書籍を貸し出していますが、日本は3,210ある公立図書館のうち12館に留まっています。

 

米国では、ブランド力アップで売上増を目論む推進派と、貸出で本が売れなくなるとする反対派と、電子書籍開発企業との間で、思惑や利害関係が複雑に絡み、図書館を舞台にビジネスモデルの実験場として競争が激化しています。

 

例えば、図書館向けデジタルコンテンツ配信サービスのシェア95%を占める「オーバードライブ社」では、その地域に在住する人に図書館カードを発行(非在住者には有償)して、貸出申請するとKindle等に配信するというシステムを提供しています。一定期間後に自動返却され(電子書籍のデータは残らない)、1冊のデータが同時に複数貸出されず、無制限にデータが出回らないようにして、出版社に配慮した仕組みとなっていることから、連携が難しいと考えられる図書館と出版社の間を同社が取り持っている構図です。

 

一方、日本の出版社業界が、図書館と協力しようというのは異例の出来事です。
これを理解するには、出版業界の歴史を理解する必要があります。

 

高度経済成長期にあって、「委託制度」が資金力の乏しかった書店を支え、「再販制度」が出版エコシステムを堅牢にし、「著作権制度」が出版社と著作者との関係構築で商品供給を円滑にしてきたのです。しかし現在、「出版社」「書店」「取次店」が深刻な状況に陥っているのは、出版のデジタル化に伴う制度疲労があり、変革が迫られているのです。

 

さて、米国で好調の「オーバードライブ社」が日本進出する可能性も考えられる中、日本の出版社業界は、図書館との協力をどのように進めれば良いのでしょうか?

 

その「オーバードライブ社」が興味深いデータを示しています。それは、「図書館で電子書籍を借りる人は、本をよく買う人でもある」という内容です。
2012年6月13日〜7月31日にウェブ上で行われた調査に対し、75,000人以上からの回答から、以下の結果が得られました。

 

・平均で月3.2冊の(紙・電子)書籍を購入する。
・53%が図書館を物理的に利用し、電子書籍も借りる。
・35%が借りた後でその(紙・電子)書籍を購入した。

 

このデータのみから考えると、協力していく方法としては、図書館と書店を“並べて”しまう方法が考えられます。図書館と書店では立地条件が異なるので、双方に相互アクセスできる端末(PC)を置けば、ユーザーは借りる・買うが同時にできます。

 

・図書館:リアル書籍貸出+電子書籍貸出+電子書籍販売+立ち読み
・書店 :リアル書籍販売+電子書籍貸出+電子書籍販売+立ち読み
・ネット:リアル書籍通販+電子書籍貸出+電子書籍販売+一部立ち読み
※条件が揃えば、その場で電子書籍印刷製本サービスも可能でしょう。

 

例えば、上記のような形でそれぞれがサービスを展開するということです。

 

別の切り口の情報が手に入れば、また別のソリューションを考えることもできるかもしれません。

 

さて、皆さんが角川取締役会長だとしたら、どのような戦略を考えますか?



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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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