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2012/09/05配信分

グルーバル感覚 経営戦略

日本の家電メーカーの将来

日本の家電メーカーの業績がなかなか回復しない中、シャープと鴻海の交渉状況が流動的となり、大淘汰時代が始まったとする見方が出てきています。

 

そこで今回の【MBAホルダーの視点】では、日本の家電メーカーの将来に向けての道を探るためにも各社が失敗した要因などについて分析していきたいと思います。

 

まずは、電機各社の純損益をみてみましょう。

 

2011年度はパナソニック/ソニー/シャープ/NECが巨額の赤字を出しましたが、2012年第1四半期もシャープの巨額赤字は続き、2011年度は黒字で好調と見られていた富士通/東芝もこの四半期は赤字を出しています。

 

【電機各社の純損益】
2011年度 2012年第1四半期
NEC      ▲1102億円 ▲ 179億円
富士通    + 427億円 ▲ 251億円
日立製作所  +3471億円 + 204億円
東芝     + 737億円 ▲ 121億円
ソニー    ▲4567億円 ▲ 246億円
パナソニック ▲7722億円 + 128億円
三菱電機   +1120億円 + 304億円
シャープ   ▲3760億円 ▲1384億円

 

巨額赤字を出した各社に共通するのは、テレビ事業で巨額投資を進めたものの、価格下落と需要停滞により、急速にキャッシュ・フローが悪化してしまった点です。

 

日立/三菱が比較的好調なのは、デジタル家電部門の比率が軽く、社会インフラ部門で着実に稼いでいる点が共通しています。また、富士通/東芝が赤字に転落したのは、デジタル関連部門の比率が高く、この部門の不調が足を引っ張ったためのようです。

 

一方、アップル/サムスンは絶好調で、アップルは世界一の時価総額を記録しました。両社に共通するのは、ピンポイント投資で他社を圧倒し、全方位的な戦略とビジネスモデル構築を進めてきた点でしょう。

 

この2社に牽引されるように、台湾/韓国/中国の各社も好調ぶりを示し、日本の家電メーカー復活は無いとする見方が出ています。

 

その理由について様々な見方がありますが、大きくは(1)商品軸、(2)経営軸、(3)ビジネスモデル軸の3つに分類できるので、この分類に沿って失敗の本質を分析してみましょう。

 

(1)商品軸

日本の家電メーカーは、商品企画レイヤーに留まり、単品での比較優位性をうたって機能や性能を追求し続けています。しかし、アップルやサムスンは、商品を中心にして、ネットワークや機器間のシステム機能、コンテンツサービスと連携して収益源を広げるビジネスモデルの構築を進めています。

 

よく日本の家電メーカーは、iPhoneを見て「ハードウェアなら作れるが、サービスを含むパッケージは作れない」という声が聞かれます。これは、日本の家電メーカーが多くのグループ会社を抱えている為、商品カテゴリーを超える企画を打つには、各社間の調整や特定のグループ会社や部門の存在を否定せねばならず、単品商品しか企画できない構造的な要因があると言えそうです。

 

(2)経営軸

日本の家電メーカーの多くは、経営陣の入れ替えが年功序列に従い数年程度で進められ、報酬職や名誉職の傾向が見受けられます。しかし、数年程度の短期間では一貫した経営方針が実行できず成果が得にくいものです。短期間で成果を得るには、トップの絶対的な権限が必要ですが、得てして多くの経営幹部を抱えて複雑化しており、不協和音や責任回避を招きやすく、失敗の軌道修正も遅れてしまうでしょう。

 

本来、成果主義は経営陣にこそ実施されるべきものですが、社員に対して形式的に採用してしまうと、モチベーションや社内コミュニケーションに問題が生じて、現場の新しい事にチャレンジする意欲が低下するという経営課題もありそうです。

 

(3)ビジネスモデル軸

テレビ事業で失敗したのは、売上高のかなりの部分を占める為に、パネル工場への集中投資を許し、業界全体の供給過剰を見抜けず価格下落を招いてしまった点でした。

 

デジタルの特徴とは、設備さえあれば同じモノが作れるので、誰でも参入できて差別化が難しく、コモデティ化しやすいという点が挙げられます。特に、デジタル家電分野では、垂直統合モデル構築よりも、魅力的なビジネスモデル構築が鍵を握ると言えそうです。

 

このままでは、日本の家電メーカーは、厳しい状況に追い込まれかねません。

 

・韓国/台湾/中国企業勢との吸収/合併/売却
・政府主導が入り、合従連衡の推進
・銀行団が入り、資金回収視点による整理/分割

 

まさに大淘汰時代へと突入するかも知れません。
それでも生き残るためには、どのような手を打つことが考えられますでしょうか。

 

短期的には、キャッシュフローを改善させるべく事業/子会社/組織/人員の整理を進め、企画するレイヤーを商品軸からビジネスモデルを構築できる様に、子会社や組織の枠を再構築する事が求められるでしょう。

 

そして、日本市場だけでなく、自社に有利な条件を持つ新興国(例:グループ会社の販売ルートが既にある、その国の人材を既に雇用している、等)を狙い、日本での成功体験をその国で再現する『タイムマシン経営』などが考えられます。

 

かつて『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と称された70年代、電機メーカーは、官民一体/護衛船団方式で強さを発揮していました。それが、徐々に分断/独立/複雑化して、視点が矮小化して、経営の罠に陥りやすくなったのではないでしょうか。

 

この状況を打破するには、現状を改善したり、かつての姿に戻そうとするのではなく、全く新しい視点で、例えば日本版シリコンバレーといった規制撤廃された特区を作り、電機各社が人/モノ/金/知恵を投資して、ビジネスモデルの種蒔きと成長株を見つけ出す仕掛けづくりが必要なのかもしれません。

 

さて、皆さんが電機各社の社長だとしたら、どのような打開策を考えますか?



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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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