BIZトピックス 話題のビジネスマナーや、時事問題を大前研一やMBAホルダーの視点で鋭く解説。あなたの成長へのプロセス作りを後押しする、ビジネストピックス集。

2016/02/19配信分

グルーバル感覚 経済原論

未知数すぎるスー・チー政権誕生へ【大前研一メソッド】

熊画像
上部枠

ついにアウン・サン・スー・チー大統領がミャンマーで誕生しますが、うまいこと民主化できるんでしょうか? 軍事政権から政権を奪取して、民主化に向けて動くわけなんですが、スー・チーさんの政治手腕というのはどんな力量なんですかね?

下部枠
矢印
人画像
上部枠

言うは易し、行うは難しという諺もある通り、そう簡単ではなさそうだ。スー・チー氏の政治手腕も未知数だからな。 どんなことが待ち受けているのかを予想してみるぞ!

下部枠
矢印

 

■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 スー・チー新政権誕生へ 』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

2015年11月に行われたミャンマーの総選挙はアウン・サン・スー・チー氏率いるNLD(国民民主連盟)が圧勝しました。議会の単独過半数(上院、下院の約60%)を握ったNLDは大敗したテイン・セイン大統領の与党、USDP(連邦連帯発展党)に代わって大統領の指名権を獲得、現大統領が任期満了を迎える2016年3月の政権交代が確実になりました。

 

元軍人のテイン・セイン大統領も「平和的に政権を移譲する」と声明を出しています。

 

ミャンマーの新政権交代と政権運営は順調に行われるのでしょうか?
今後の可能性を大前研一に聞いてみましょう。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 自由主義的な市場経済への移行は前途多難 』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

◆国家ビジョンや経済政策なきスー・チー新政権

 

48年にイギリスから独立、60年代から半世紀以上続いてきた国軍の政治支配は終焉し、民主派政権による第2幕が始まる。ただし、ミャンマー民主化の象徴だったスー・チー氏が、引き続き政治的な求心力を保持して近代化、自由化、市場経済化を推し進められるのかといえば、そう簡単ではない。独立運動を主導した建国の父、アウン・サン将軍の娘でオックスフォード大卒のインテリ。自身も非暴力民主化運動のリーダーとして軍事政権と対峙し、15年に及ぶ軟禁生活にノーベル平和賞受賞と波乱万丈の半生を送ってきた。

 

国内では圧倒的な人気を誇り、民主主義のアイドル、もしくはジャンヌ・ダルクと持ち上げられて欧米先進国の受けもいい。だが、政治手腕はまったくの未知数だし、経済政策の経験もない。大衆運動のリーダーとして25年前から言い続けているのは、「民主主義でやっていこう」ということだけで、「ミャンマーをこうしていく」という国家ビジョンや経済政策は選挙期間中何も言及していない。

 

ミャンマーではテイン・セイン大統領が民政移管を進めるとともに経済改革に取り組み、諸外国を飛び回って市場開放を印象付けてミャンマーへの投資を促してきた。その意味では軍政の名残とはいえ、テイン・セイン政権の功績は大きい。NLDのティン・ウー最高顧問は次期政権の経済政策について、自由主義経済と対外開放を基本とすることを表明。海外からの投資を呼び込むことで経済発展につなげる考えを示している。

 

しかし、政治主導の市場経済化ができるかどうかも大きな問題だ。スー・チー氏当人に資質やキャリアがなくてもキャビネットを組む政治家がこれをカバーできればいい。だが、そちらはさらに心許ない。NLDが総選挙でマジョリティを得たのはスー・チー氏の国民人気によるもので、当選した議員は海のものとも山のものとも知れず組閣できるだけの人材がいまだ見つかっていない。選良か否か、議員や閣僚としてふさわしいかどうか、まったく吟味されていないのだ。

 

今後、“スー・チー チルドレン”が問題を引き起こすことは容易に予測できるし、国民が幻滅すればすぐにスー・チー離れにつながる。そのときに良家のお嬢さん育ちで政治的な基礎体力がない、しかも70歳を越えたスー・チー氏がどこまでリーダーシップを発揮できるだろうか。

 

 

◆スー・チー氏は大統領になるのか?

 

そもそもスー・チー氏はミャンマーの大統領になる資格がないという問題もある。彼女はオックスフォードの後輩であるイギリス人男性と結婚して2人の息子をもうけているが、ミャンマーの憲法規定で外国籍の配偶者や子供がいる場合、大統領になれない。この規定に抵触するのだ。夫とはすでに死別しているが、子供はイギリス国籍。大統領規定を含めて、国軍に強い権限を与えている現行憲法を改正するためには、国会議席数の4分の3の賛成が必要。

 

しかしミャンマー国会を構成する上院下院には25%の軍人議席枠が存在するため、NLDは残りの全議席を獲得しなければ憲法改正に持ち込めない。単独過半数でもまだ足りないのである。スー・チー氏の大統領就任を阻んでいる憲法第59条(f項)を一時停止する特別法を、NLDが過半数を占める国会で通すことによって実現するという。政治関与を続ける国軍は実質的な改憲に消極的で、3月の新政権発足までぎりぎりの交渉が続いている。

 

現行憲法の下で何としても大統領になって国民を導きたいと思うのなら、子供の国籍を移すことだってできるはずだ。しかし、それをしないのは、子供たちはイギリス国籍のままにしておきたいと考える理由があるからだろう。ミャンマーの将来に対して明確な自信がないことの裏返し、と勘繰られても仕方がない。

 

政治の表舞台から退場したとはいえ、ミャンマー国軍は隠然たる力を持っている。憲法が規定する国家安全保障委員会はメンバー11人のうち6人が軍部から選出される。この委員会が非常事態を宣言すると、戒厳令を発令したり、議会を解散したりできる。つまり、時の政府をひっくり返す権限を持っているのだ。

 

委員会メンバーの過半数が軍人ということは、クーデターの権利を軍が握っていることになる。スー・チー氏が独裁に走ったり、国軍を締め付けたりするような政策を採った場合、非常事態宣言が発令されて再び軍政に戻る可能性もあるわけだ。

 

 

◆内戦が続く少数民族武装勢力との和平交渉

 

軍政が終わっても民主化、近代化がすんなり進まないミャンマーの国情もある。1つは少数民族との内戦だ。人口約5000万人の3分の2はビルマ族だが、残る3分の1は少数民族で、文化の異なる民族が130以上存在する。イギリスから独立した直後からビルマ族中心の国づくりに少数民族が反発、様々な民族が分離・独立を求めて武力闘争を繰り広げてきた。麻薬で稼いで戦力を整えている民族もあれば、中国の影響を強く受けている民族もある。イスラム系の民族やキリスト教系の民族もある。利権争いや宗教対立などの要素も複雑に絡み合った少数民族問題だが、15年3月にはテイン・セイン政権が16の少数民族武装勢力のうち、残る2勢力と停戦合意したと発表した。今後、少数民族との和平交渉はNLDによる新政権が引き継ぐだろう。当然、国軍の後ろ盾は必要なわけで、新政権と国軍の関係性が注目される。

 

さらには北西沿岸部に住んでいるラカイン族のように、パスポートや投票権などの国民的な権利をもらえずに迫害されている少数民族もある。ラカイン族はバングラデシュやインド北東部から流れてきた移民で、ミャンマー政府は彼らを自国民として認めていない。「すべての民族でビルマを構成する」と語るスー・チー氏でさえ、以前「(ラカイン族は)ビルマ人じゃないから知らない」とインタビューで答えていた。少数民族問題や民族間格差の問題は非常に根深く、ミャンマーの政情を不安定なものにしている。

 

 

◆汚職・腐敗の体質

 

ミャンマー社会にはびこる汚職・腐敗も民主化や近代化の足枷だ。かつては汚職腐敗国家ランキングで北朝鮮の次点がミャンマーだった。最近は多少順位が下がったが、軍人と許認可権を握っている役人の腐敗ぶりは相変わらず。

 

人件費が上がってしまった中国に代わる投資先として期待されたが、許認可のかったるさと理不尽な汚職腐敗ぶりに海外の事業家もすっかり懲りて近頃は熱が冷めてしまった。人件費にしても1年前は月額30~40ドル程度と言われたが、テイン・セイン政権の経済改革で給料も物価もどんどん上がっている。収賄で儲けた連中は高値でも平気で買うから彼らがインフレを加速しているとさえ言われている。庶民には不満が蓄積しているはずだ。今後、スー・チー氏の取り巻きがミャンマーの利権を狙う外国勢に取り込まれて、民主派の新政権が汚れていくのは目に見えている。

 

 

独裁政権、あるいは社会主義体制の計画経済から自由主義的な市場経済への移行は非常に難しい。

 

ソ連解体後のロシアではハーバード大学(当時)のジェフリー・サックス教授の指導の下に急速な民営化が進んだが「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥が誕生して、ロシア経済は彼らが富を独占するマフィア資本主義に歪んだ。アラブの春で独裁政権が取り除かれた中東諸国では市場が大混乱し、新しい秩序が生まれるに至っていない。

 

アウン・サン・スー・チーというジャンヌ・ダルクが遂に勝利したけれど、前途はそれほど明るくないし、人気が高いがゆえに逆に反動が怖い。

 

民主主義の基本は「最大多数の最大幸福」だが、これは経済学的にも社会制度的にも設計が非常に難しい。私がマハティール元首相の時代にマレーシアのアドバイザーになったとき、国民1人当たりGDPは1200ドル。それが中進国の目印である1万ドルを超えるのに20年かかった。ミャンマーの民主化、近代化はまだ端緒についたにすぎないが、よほどの指導者が現れない限り前途は多難、と言わざるをえない。

 

 



人画像
上部枠

今回のポイントだ!
●2015年11月に行われたミャンマーの総選挙はアウン・サン・スー・チー氏率いるNLDが圧勝した。
●議会の単独過半数を握ったNLDは、テイン・セイン大統領の与党、USDPに代わり大統領の指名権を獲得、2016年3月の政権交代が確実になった。
●英国籍の子供を持つスー・チー氏の大統領就任を憲法が阻んでいる。規定を一時停止する特別法を、NLDが過半数を占める国会で通す方針。
●スー・チー氏の政治手腕は未知数。ミャンマーの民主化、近代化はまだ端緒についたにすぎないが、よほどの指導者が現れない限り前途は多難。

下部枠
矢印
熊画像
上部枠

スー・チーさんはよほどの指導者としての力量を備えているか見ていく必要がありますね!

下部枠
矢印
一票を!

今後のサイト作りの参考にさせて頂きます。

役立った!
同一カテゴリのトピックスを読む
MBA診断

本サイトのBIZトピックス・ビジネステンプレート・ビジネス用語集は、ビジネス界の第一線で活躍する大前研一が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学大学院が提供しております。

【無料】9日間でカフェ経営メルマガ

<ステップメール>経営学の要諦を物語で学ぶ!定年退職した父親は元公務員。ビジネス経験ゼロの父が、一流の経営者になるまでの感動のストーリー

BIZTIPSとは?
close

BIZTIPSは、ビジネスに関する様々な情報を集約したビジネスパーソンの知的給油所です。現在進行形で起こっている諸問題、疑問に対するプロの見解や最新のビジネストピックスなど、必読情報満載のポータルサイトです!

BIZまとめ
役立つ5つのコンテンツ
BIZトピックス
BIZ用語集・テンプレ
BIZライブラリ
BIZリファレンス
検索人気ワード

バナー

バナー

バナー

BIZクイズ一問一答!

問題

市場そのものは隆盛を続ける一方で外資に国内系企業が淘汰、買収されたりすることを何という?

ビジネスの第一線から最新情報を配信中!
本サイトは日本を代表する経営コンサルタント・大前研一氏が学長を努めるビジネス・ブレークスルー大学大学院が提供しております。
ビジネスの第一線で活躍する講師陣ならではの最新のビジネス情報を配信中です。

大前研一

大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

PAGE TOP