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2016/06/10配信分

グルーバル感覚 経済原論

「パナマ文書」問題はどこで終焉を迎えるのか!?【大前研一メソッド】

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パナマ文書で税逃れをしていた人たちが公開されましたが、著名人がマスコミなどに取り上げられていましたね。結局不正利用しかされていなかったんでしょうか?

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タックスヘイブンに会社を設立すること自体が非合法になるわけではない。問題は他にある。 アングラマネーの資金洗浄に使われていたとしたらどうだ? 一体なにが問題なのか、一緒に考えていくぞ!

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 「パナマ文書」のデータベースがついに公開 』
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中米パナマの法律事務所、モサック・フォンセカから流出した顧客リスト、「パナマ文書」が世界を揺さぶっています。パナマ文書のデータベースが5月上旬に公開されました。

 

【資料】The Panama Papers
―― ICIJ = The International Consortium of Investigative Journalists
 ※データベースの使い方はこちら

 

パナマ文書とは、過去40年間に英バージン諸島などのオフショア金融センターを利用した20万社以上の企業や個人の情報が記載されているリストです。流出した文書のサイズは2.6テラバイトと巨大で、そこにタックスヘイブンを利用して企業や個人が“節税”を行っていたことを裏付ける内容を含めた1150万件の機密情報が収められていると言われています。

 

世界の富裕層がいかにタックスヘイブンを活用して資産形成しているかを、パナマ文書は暴いたわけですが、世間の関心を集めているのはそこに登場する人物の名前です。かつての国家元首や現職のリーダー、各国の有力政治家や公職者、実業家、著名人やスポーツ選手の名前も挙がっています。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 各国が協調して税逃れ対策を講じていく必要性がある 』
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◆「文書」には英キャメロン首相亡父の名前も

 

パナマ文書の漏洩で税金逃れや資産隠し疑惑が噴出して、政治的な混乱をきたす国も出てきている。犠牲者第一号はアイスランドのグンロイグソン首相で、すでに辞任に追い込まれた。同首相は2007年に妻と共同名義で英領バージン諸島にオフショア会社を設立、この会社はリーマン・ショックによる金融危機で破綻したアイスランドの主要銀行の債券に投資していた。金融危機当時に銀行救済に当たったのが当の首相であり、世論の強い批判を浴びた。

 

亡父の名前がパナマ文書から見つかったイギリスのキャメロン首相も国内世論の批判にさらされている。父親がオフショアに設立した投資ファンドにキャメロン首相自身も投資して、首相就任前の10年に約300万円の売却益を得ていた。小額だが、タックスヘイブンを利用した多国籍企業の租税回避問題に先鞭をつけて規制に乗り出していたキャメロン首相としては手痛いスキャンダルだ。

 

タックスヘイブンにペーパーカンパニーを立ち上げて、稼いだ利益をそこに送金すれば、利益に対する税金を回避できる。それを世界中で運用してその会社に戻せば、運用益に対する税金も回避できる。これがタックスヘイブンを利用した節税と資産形成の仕組みだ。

 

そうしたペーパーカンパニーの設立をサポートしているのが、モサック・フォンセカのような法律事務所。モサック・フォンセカは世界40カ国以上に現地事務所を置き、500人規模のスタッフを抱えている世界最大の法律事務所の一つだ。中国の主要都市に支店があるのも「そこに需要があるからだろう」と勘ぐらせる。

 

タックスヘイブンに登録したペーパーカンパニーに活動実態はほとんどない。多くの場合、法律事務所が提供する資産管理サービスに則って管理され、その法律事務所とつながりのある金融機関が資産運用を請け負っている。パナマ文書にもクレディ・スイスやUBS、英HSBC、ソシエテ・ジェネラルなど世界トップクラスの金融グループを筆頭に、多数の金融機関の名前が散見する。

 

◆合法的なものもあるが不正資金の洗浄に使われるなど、問題点は大あり

 

タックスヘイブンにペーパーカンパニーをつくること自体は非合法とは言えない。問題は一旦そこに入った金は足がつかなくなって、誰のものなのか、どこから入ってどこに出ていくのか、外目にはわからなくなることだ。それゆえに不正な資金流用やアングラマネーのロンダリング(資金洗浄)などに使われやすい。実際、パナマ文書に出てくるいくつかの金融機関は当局から脱税やマネーロンダリングの疑いで捜査を受けている。

 

ロシアのプーチン大統領の名前はパナマ文書にはない。しかし「友人」の名前は複数出てくる。その一人、チェリストで音楽家のセルゲイ・ロルドゥギン氏はタックスヘイブンを利用して20億ドル(約2400億円)の不透明な取引を行ったと報じられている。

 

プーチン大統領はパナマ文書絡みの疑惑に対して「ロシアを弱体化させようとする組織的な試み」と反論しているが、見当違いだと思う。そもそもパナマ文書流出の発端は、南ドイツ新聞に漏らされた匿名のリークだ。データが膨大で多国にわたるために、米ワシントンDCにある国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に持ち込まれ、数百人のジャーナリストが約1年かけて文書の分析を行った。内容に関してはICIJの厳正な管理に基づいて世界同時に随時発表されている。

 

ニューヨークタイムズでもワシントンポストでもなく、フィナンシャルタイムズでもなく、最初の駆け込み先が南ドイツ新聞だったこと、そして接触時のドイツ語のメールのやり取りなどを見ると、リークした人物は同紙が広く読まれている地域(ミュンヘン、シュトゥットガルトなど)で生まれ育ったという推測もできる。

 

◆顧客情報を南ドイツ新聞にリークした人物は謎のまま

 

モサック・フォンセカは国外のサーバーからハッキングを受けたとしてパナマの検察当局に被害届を出している。顧客情報の管理を至上命令とする大手法律事務所のシステムを食い破るのだから、同事務所のシステムを構築した出入り業者など、内部に近い人間が関与している可能性は高い。

 

私は米政府の情報収集の悪辣な手口を告発したエドワード・スノーデン氏のようなシステムエンジニアをイメージする。金銭目的や組織的陰謀というより、抜き出した情報に驚いて、「涼しい顔をした世界のリーダーや金持ちがタックスヘイブンで何をやっているのか。世界の人々はこの情報を共有すべきだ」という義憤に駆られた行動のように思える。

 

文書に名前が見つかった企業や個人に対する関心は引き続き高く、スキャンダラスな報道やつるし上げるような騒ぎもしばらくは続くだろう。多くの日本の企業名も取り沙汰されているが、日本企業の場合は課税逃れや資産隠しが目的というより、海外での取引慣行からタックスヘイブンを活用しているケースが多いと思われる。

 

またパナマ文書には習近平国家主席以下、中国共産党の要人が関連する企業も多数登場する。腐敗一掃を掲げてトラ(党要人)やキツネ(海外に逃亡した汚職官僚)を狩ってきた現指導者も一族郎党で不正蓄財に励んでいた証拠だ。国内への影響を恐れて、中国政府はパナマ文書を黙殺している。報道規制も敷いているようだが、ネットなどを通じて国民に知れ渡るのは時間の問題。国民の不満の高まりが体制崩壊に直結しなくても、パナマ文書の影響で政権がもたつくようなことになれば、ただでさえ減速している中国経済が世界経済に与える影響は計り知れない。

 

 

問題はパナマのような租税回避地はマレーシアのラブアン島なども含めれば世界中に30近くあり、モサック・フォンセカのような租税回避を指南する法律事務所も多数存在する、ということだ。

 

つまり今回のパナマ文書問題は氷山の一角で、国家が国民を管理する「国民国家」という大前提の制度を蝕む恐ろしい病原体、という認識を持たねばならない。今後は見えてきた部分だけではなく、抜け道となっている制度や法律をG20などの会議体でつぶしていく膨大な作業が必要となる。各国が協調してタックスヘイブン対策を講じていくことになろう。

 

たとえば国ごとに法人税率や所得税率が違いすぎることがタックスヘイブンの利用を促しているとすれば、各国の税率をなるべく一致させていく考え方もある。ペーパーカンパニーの実質的所有者を公表することを義務づけたり、国際的に合意できることは多いはずだ。法人に対しては事業を行っている国でまっとうな税金を納めさせる仕掛けをつくるなどの租税回避への対策も重要だ。

 

それが無理なら、タックスヘイブンの国や地域でも資産税のような形でペーパーカンパニーから税金を取るようにさせて、税収の半分程度を本来税金が納められるべき国に返還させるような(外形標準課税に近い)手もある。

 

犯罪組織や独裁政治家の資金隠しやマネーロンダリングに利用させないためにも、誰の金がどこにどれだけあるのか、情報を開示させて透明性を高める必要がある。

 

 



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今回のポイントだ!
●中米パナマの法律事務所、モサック・フォンセカが税逃れを指南している顧客リスト「パナマ文書」が流出。そのデータベースが公開され、世界を揺すぶっている。
●タックスヘイブンにペーパーカンパニーをつくること自体は合法的なものもあるが、不正な資金流用やアングラマネーの資金洗浄などに使われやすい。
●パナマ文書問題は氷山の一角なので、各国が協調してタックスヘイブン対策を講じていかなければならない。

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問題は所有者が誰なのかはっきりしないことにありそうですね! しかしプーチン大統領は考えることがダークなことばっかりな気がしますね…。 クマでもビビります。

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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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