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2016/08/12配信分

論理思考

大衆迎合主義が招く衆愚政治の恐怖【大前研一メソッド】

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アメリカの新しい大統領候補にトランプ氏、フィリピンのドゥテルテ大統領は就任からいきなり麻薬密売人を多数排除していますが、これって結局人気とり発言で大統領にしてしまったりするからなんでしょうか?

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そうだな。フィリピンは恐怖政治のようになってるな。しかし、その大統領を選んだのは他ならぬ国民自身だ。 大衆迎合主義が招いた結果が出ている。今回はそれについて解説していこう。

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『  ポピュリズム旋風が世界に吹き荒れている 』
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ラテン語の「populus(人民)」を語源とするポピュリズムは、元来、既存の支配層や知識人などによる「エリート主義」を批判して、一般大衆の願望や不安、不満などの「実感」を重視する政治思想、政治体制のことです。

 

民意を尊重するという意味では非常に民主主義的な概念なのですが、人々の欲求不満を煽って支持を集める手法は、しばしば衆愚政治を招きやすくなります。このため現代においては、ポピュリズムは大衆に迎合して人気を得ようとする「大衆迎合主義」というネガティブな意味で使われることが多くなりました。

 

「ポピュリズム旋風が世界に吹き荒れている」と大前研一は言います。ポピュリズムについて大前が解説します。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 ポピュリストたちの公約の嘘を見抜けない有権者 』
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◆ラテンアメリカ、ベネズエラのポピュリズム=チャベス、マドゥーロ

 

ポピュリズムから衆愚政治に陥った典型例がベネズエラである。チャベス前大統領という極めつきのポピュリストが登場して、「21世紀の社会主義」を掲げ、貧困層向けの無料診療所や無償住宅の建設などバラマキ社会福祉政策を推進した。チャベス前大統領は2013年に癌で死去したが、チャベスの後を継いだ腹心のマドゥーロ大統領も路線を継承した。

 

バラマキの源泉は世界最大の埋蔵量を誇る石油資源である。しかし、1バレル=120ドル以上でなければ成り立たないような国家予算を組んで無駄遣いし続けた結果はどうなったか。1バレル=40ドル程度にまで石油価格が暴落したために石油産業は壊滅、ハイパーインフレに襲われてベネズエラ経済は破綻状態に追い込まれてしまった。

 

ない袖は振れないとばかりに政府は緊縮路線に切り替えたが、公務員を増やしすぎて、いくら削減しても追いつかない。とうとう週休2日ではなく週休5日制にして、公務員の給料を60%カットしたほどだ。手がつけられないハイパーインフレで国民生活は困窮し、人々は今頃になって政府を強く非難している。しかし、チャベスやマドゥーロを大統領に選んだのはほかならぬ国民自身なのだ。

 

◆欧州、ギリシャのポピュリズム=チプラス

 

これはラテンアメリカの途上国に現れた特異な事例ではない。民主主義の生まれた国であるギリシャも衆愚政治に陥っている。

 

ギリシャは巨大な財政赤字の隠蔽が明らかになって経済危機に陥り、EUから金融支援の条件として年金の4割カットや公務員の3割削減などの厳しい緊縮財政を求められてきた。しかし、放漫財政の受益者(たとえば年金の受給開始年齢は53歳で、国民の4人に1人は公務員)でありながら、ギリシャ国民としては自分たちの生活が苦しくなるような緊縮財政は受け入れたくない。

 

そうした“民意”に迎合して、「EUの厳しい要求を拒否しよう」と叫んで政権の座に就いたのがチプラス首相だ。

 

EUの財政緊縮策の否決という国民投票の結果を背負って交渉に臨んだチプラス首相だったが、デフォルトを目前に控えEUの言うがままに妥協を迫られた。これに無責任なギリシャの民衆は大激怒して、チプラスに退陣を迫っている。しかし、彼が「EUの緊縮策を受け入れるべきだ」と主張していたら首相になれなかったわけで、責められるべきは嘘を見抜けなかった国民なのだ。衆愚政治そのものである。

 

ギリシャほど危機的状況には至っていないものの、経済危機の火種と難民問題を抱えるヨーロッパは各国でポピュリズムの台頭が目につく。

 

EU離脱や反移民を主張する極右勢力や反緊縮を掲げる極左政党が勢いを増して、政策にも影響を及ぼしている。EU離脱派が制したイギリスの国民投票にしても、「離脱すれば移民を自分たちでコントロールできる」「EUの細かな制約に縛られなくてすむ」という離脱派のポピュリズムに先導された側面が強い。

 

◆米国のポピュリズム=トランプ、サンダース

 

今回の米国大統領選を見ていても、ポピュリズムの台頭が著しい。予備選の話題をさらったトランプ現象もサンダース現象もポピュリズムの観点ではまったく同じなのだ。共和党の候補者指名レースを確実なものにしたドナルド・トランプ氏は大衆が聞きたいことをズバリと言う典型的なポピュリストだ。

 

移民に仕事を奪われたと思っている白人の労働者階級には、「メキシコ国境に壁をつくれ」というトランプ発言は心地よく響く。ISなどイスラム過激派のテロに恐怖したり、怒りを覚えている人々に「イスラム教徒は入国禁止」というトランプ氏の主張は好感を持たれる。しかし、冷静に考えればメキシコ国境に万里の長城のような壁がつくれるはずがないし、メキシコに壁の建設費を払わせられるわけもない。

 

それに、いくらイスラム教徒の入国を禁じても、国内には約600万人のイスラム系移民がすでにいる。6月にフロリダで50人が死亡する最悪の銃乱射事件が起きた。射殺された容疑者はアフガニスタン系の米国人で、イスラム過激派との関係が疑われたが、どうやら単独犯によるヘイトクライムの可能性が高いらしい。イスラム教徒の入国を禁じても、ホーム・グロウン・テロリスト(国外の過激思想に共鳴して、国内出身者が独自に引き起こすテロのこと)には何の効果もないのだ。

 

トランプ氏が“右のポピュリスト”なら、“左のポピュリスト”は民主党の指名争いで善戦したバーニー・サンダース氏だ。自ら「民主社会主義者」と名乗り、若者世代や白人の貧困層に過大な公約をして旋風を巻き起こした。しかし、「公立大学の授業料無償化」とか「国民皆保険」とか、配る政策ばかりを主張して、財源についてはほとんど何も言っていない。

 

そもそも連邦政府の行政長である大統領になっても、公立大学の授業料を無償化する権限はない。アメリカの大学のほとんどはコミュニティカレッジ(2年制の短期大学)で、授業料が無料になったら運営が成り立たなくなるのだ。政府が授業料を補填しようものなら、税金がいくらあっても足りない。

 

国民皆保険にしても、3000万人に医療保険を補填したオバマケア(オバマ政権による保健医療制度改革)でさえ限界ぎりぎりなのに、それを上回る制度改革が実現可能とはとても思えない。

 

つまりトランプ氏もサンダース氏も、できもしない公約を並べ立てて、受益者とおぼしき人々から熱狂的な支持を集めてきたのだ。これまでの大統領選挙でも、ロス・ペロー氏のようなポピュリストはいくらでも出てきた。しかし、マスコミのチェック機能が働いて、予備選で排除されるのが通例だった。

 

ところが今回は泡沫候補と思われたポピュリストが不思議と残った。なぜか。マスコミのチェック機能が弱くなったのも確かだが、大きな理由の一つは、既存政党の当たり前の主張に飽き飽きしたり、不満を持つ人々が増えたからだろう。だから本命視されたヒラリー・クリントン氏が常識的なことを言えば言うほど「つまらない」候補として人気を落としてきたのだ。

 

 

日本はどうだろうか?
「低成長が長く続いても失業者はあふれていないし、給料が上がらなくても食い詰めて路頭に迷っている人は少ない。難民や失業の問題が深刻化していない日本ではポピュリストの出る幕はない」と思っているなら大間違いだ。

 

私が出馬した1995年の都知事選は青島幸男氏が「ちゃぶ台をひっくり返してやる」という意味不明な公約で圧勝したし、同時期の大阪府知事選で選ばれたのは後に強制わいせつ事件で辞任に追い込まれる横山ノック氏だった。

 

都市博を中止にしたぐらいで何の仕事もしなかった青島氏の後を継いだのは石原慎太郎氏。週に2、3日しか登庁しない石原氏を都民は4期も連続して選んで、後を継いだ猪瀬直樹氏や舛添氏も公約らしい公約はなく、それでも選挙は正統派のイメージだけで圧勝した。

 

いずれも大した仕事をしないうちに大きく躓いて、都政は停滞したままだ。
振り返れば、青島、石原、猪瀬と3代続けて作家が都知事になったわけだが、作家は物語をつくる人間であって行政能力を期待するほうがおかしい。もっとも行政能力がなくても“自動運転”で務まるのが東京都知事という仕事なのかもしれないが。

 

ベネズエラやギリシャのように、聞こえのいいポピュリズムに引きずられた民主主義が行き着く先は、衆愚政治である。

 

衆愚政治を避けるには、「me first(俺を先にしろ)」という考え方に染まらないことが重要だ。自分の損得ではなく、グループ全体にとって、コミュニティ全体にとっていいことなのか、悪いことなのかで判断する。自己中心ではなく集団全体に重きを置く。個人よりも全体をよくしようと発想できる人が過半数いなければ、民主主義は成り立たない。これは動物的には非常に高度な判断力、知性であって、身につけるためには公民教育が不可欠。

 

18歳になったら選挙権を与えるだけではなく、責任ある社会人として選挙権をどう行使すべきかしっかり教育すべきだし、知名度だけで選ばれてしまった過去の選挙をケーススタディにして候補者の見分け方まで学ばせる。
つまり過去を総括して伝える作業をぜひ一度やってみるべきだ。

 

 



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今回のポイントだ!
●ベネズエラやギリシャのように、聞こえのいいポピュリズムに引きずられた民主主義が行き着く先は、衆愚政治である。
●衆愚政治を避けるには、「me first(俺を先にしろ)」という考え方に染まらないことが重要だ。
●自分の損得ではなく、グループ全体にとって、コミュニティ全体にとっていいことなのか、悪いことなのかで判断しなければならない。

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自分の頭で考えて、候補者にしっかり投票できるようにしないといけませんね!口先だけの候補者は選びたくないです!

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経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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