BIZTIPS>BIZトピックス>独裁者エルドアン大統領に世界はなぜ味方するのか!?【大前研一メソッド】

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2016/09/09配信分

グルーバル感覚

独裁者エルドアン大統領に世界はなぜ味方するのか!?【大前研一メソッド】

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世界には強権化して国内を独裁する政治家もいますが、しばしば国民の不満からクーデターを起こす国も少なくないですね。 今回トルコで起きたクーデターを一瞬で阻止して未遂に終わらせたエルドアン大統領は、一体なんでこんなことができたんでしょうか。 クーデターを自分で引き起こしたのでしょうか。

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今回のトルコのクーデターの首謀者は一体誰だったんだろうな。 独裁政権に不満を持った誰かなのか、軍人の一部なのか、それとも大統領本人なのか。 

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 トルコでクーデターが勃発するも、2日で鎮圧され失敗 』
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2016年7月15日、トルコでクーデターが発生した。エルドアン大統領がバカンス中の隙を突いて軍の一部が決起し、欧州とアジアを隔てるボスポラス海峡に架かる橋やアタチュルク国際空港などを封鎖しました。

 

最大都市イスタンブールや首都アンカラに戦車や軍用機を展開し、国営テレビ局を乗っ取って戒厳令と夜間外出禁止令をトルコ全土に発令しました。休暇中だったエルドアン大統領は標的になりながらも難を逃れてイスタンブールに戻りました。翌16日正午には反乱軍はほぼ鎮圧されて、クーデターは失敗に終わりました。

 

今回はトルコのクーデターについて大前研一が解説します。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 独裁者でもエルドアンの政権を存続させる必要がある欧州 』
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◆クーデター勃発の背景

 

トルコでは1960年、71年、80年と過去に3回のクーデターが起きていて、国軍が全権を握っている。クーデターの力の裏付けになるのは軍事力であり、トルコ軍は「NATO(北大西洋条約機構)で米国に次いで第二の軍事大国」といわれるほど強大な兵力を有する。今回のクーデターは、イスラム化と権限強化を推し進めるエルドアン大統領に対して、軍の一部が反旗を翻したと見られる。

 

トルコは人口の99%以上がイスラム教徒(大半はスンニ派)でありながら、1923年に共和国として誕生して以来、建国の父である初代大統領ムスタファ・ケマル・アタチュルクが打ち出した「世俗主義」を国是としてきた。

 

世俗主義とは公の場に宗教思想を持ち込まないという考え方。わかりやすく言うなら政教分離の原則だ。軍人アタチュルクの系譜を受け継ぐトルコの国軍は「世俗主義の守護者」を自認している。ゆえにイスラム色の強い政権のときにはしばしば政治介入し、時にクーデターを引き起こしてきた。

 

エルドアン大統領は民主的な選挙で圧倒的な支持を受けて2003年に首相に選出された。デノミ(通貨単位の変更)と財政健全化で高インフレを収束させ、構造改革で世界からの投資を呼び込み、通貨危機後のトルコ経済を立て直した。

 

当初は非の打ちどころがないリーダーぶりで「エジプトに代わる中東の要」と期待され欧米の評判も上々だった。だが首相3期目に入ったあたりから言論統制などの強権化が目立つようになる。14年にトルコ初の直接選挙で大統領に就任すると、ロシアのプーチン大統領のように手下を首相に据えて大統領権限を強化し、独裁色を強めてきた。そしてもう一つがイスラム回帰だ。

 

反イスラム的な運動家や学者を投獄し、最近では大学構内にモスクを建設してイスラム教育を制度化したり、アルコール販売を禁止したりするなど、イスラム色の強い政策を推し進めてきた。民主主義や世俗主義に逆行するエルドアン大統領のこうした政治姿勢に対して内圧が徐々に高まってきて、クーデターという形で噴出したのだろう。

 

◆米国陰謀説から自作自演説まで

 

クーデター未遂の直後から、エルドアン大統領やトルコ政府が首謀者として名指ししたのが、米国在住のイスラム教指導者フェトフッラー・ギュレン師だ。ギュレン師は穏健なイスラム指導者で、彼が率いる社会運動(ギュレン運動)はトルコの教育や医療支援などの社会奉仕活動で大いに貢献してきた。軍や財界などエリート層にも多くのギュレン支持派がいるという。

 

もともとエルドアン大統領とギュレン師の仲は悪くなかったのだが、大統領の汚職疑惑を機に距離が離れていった。ギュレン師はクーデターの関与を否定している。しかし軍の内部にはギュレン派もいて、ギュレン師に煽動されたかどうかは別にして、エルドアン大統領のやり方についていけないと思っていた人がかなりの数いたことは間違いない。

 

クーデターを潰したエルドアン大統領はすぐさま大粛清に乗り出した。軍人や警官、判事や教員など、すでに5万人以上の公務員が拘束されたり、解任や停職処分を受けたりしている。ギュレン派は格好の粛清ターゲットで、今回のクーデター未遂は(あまりにもお粗末だったために)「ギュレン派を一掃して独裁体制を固めるための自作自演ではなかったのか」という見方まである。

 

またクーデターの2週間以上前に時計の針を戻すと、注目すべきトピックスがあった。2015年11月のロシア軍機撃墜問題でロシアの謝罪要求を突っぱねていたエルドアン大統領がプーチン大統領に謝罪したのだ。トルコにとって外貨を稼ぐ手っ取り早い手段は観光業。しかし、トルコ国内ではテロが続発して観光客が激減。ビザが要らないから大挙してやってきていたロシア人も、撃墜事件の報復措置でトルコへの渡航が禁止されて足が遠のいた。自国経済が窒息状態のエルドアン大統領としては、渡航禁止を含むロシアの経済制裁を解除したかった。だから謝罪したのだ。実際、謝罪の直後、プーチン大統領はトルコへの渡航を許可している。

 

エルドアン大統領はロシアとの仲直りついでにシリアのアサド大統領と対話する姿勢も見せているが、これを一番嫌がるのは米国だ。米国からすれば、NATOがロシアと対立を強めているときにトルコとロシアが接近するのは好ましくないし、打倒しようとしているシリアのアサド政権との関係改善も困る。エジプトみたいに軍事クーデターで親米の傀儡政権を立ち上げるのは米国の得意技。エルドアン大統領は「米国が仕組んだ」と非難しているが、真相は藪の中だ。

 

エルドアン大統領はコントロールしにくいリーダーだが、サダム・フセインのように倒すべき敵として米国は見ていない。対話の成り立つ相手だと思っているから、そこまで仕掛けることはしないと私は思う。トルコはNATOのメンバーであり、IS(イスラム国)掃討を目指す有志連合の一員でもある。米国はトルコの基地を使わせてもらっている。エルドアン大統領が国内のクルド人やギュレン派を迫害して民主主義に逆行する政策を取っても、決定的な対立は避けたいのだ。

 

◆欧州にとって、トルコは難民流入の防波堤

 

難民問題を抱えるEUとしても、トルコの存在は非常に重要だ。隣国シリアで内戦が始まって以来、トルコはシリア難民の最大の受け入れ先になっていて、現状でも200万人以上のシリア難民を受け入れている。イラクやアフガニスタンの難民を含めると300万人以上で、それがトルコ経済を疲弊させる大きな原因になっているのだ。

 

EUは60万~70万人の難民で角突き合わせているわけで、もしトルコが“イラク化”したら地続きのギリシャやブルガリアに一気に難民がなだれ込んでくる。もちろんISもトルコ中に霜降り肉みたいに群雄割拠することになるだろう。トルコが乱れれば中近東のすべての悩みが欧州を直撃するのだ。今、欧州では「エルドアン大統領の多少の独裁は仕方がない、目をつぶろう」という考え方が強い。

 

確かにサダム・フセインは独裁者だったが、排除したらイラクは分裂して宗教対立が先鋭化したうえにISの温床になってしまった。欧州ではこれが強烈な教訓になっている。トルコをイラクのようにするわけにはいかない。エルドアン大統領には元気でいてもらわないと困るのだ。

 

 

今回のクーデター未遂をきっかけに、エルドアン大統領は強権化を正当化して独裁に拍車をかけるだろう。しかし強権化、イスラム化を進めるほど、世俗主義の拠点でもある軍との対立は深まり、トルコの政情は不安定化する。

 

エルドアン大統領はEU加盟のために04年に廃止した死刑制度を「復活させる」と息巻いている。欧州から見れば、トルコはEU加盟を餌に難題をふっかける遊び相手だった。だが難民問題が内政上最大の課題となっている欧州諸国は独裁者エルドアン大統領がその防波堤になっていることを認識しているので、トルコとの対立に強い恐怖を感じている。

 

米国がまたも中途半端な介入をしたのか、エルドアン大統領が権力強化のために危ない火遊びをしたのか、いや、彼こそが被害者でかろうじて窮地を脱したのか、真相は深い藪の中だ。

 

 



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今回のポイントだ!
●2016年7月トルコでクーデターが勃発するも、2日で鎮圧され失敗に終わった。
●クーデターを潰したエルドアン大統領は大粛清に乗り出し独裁色を強めている。
●難民問題が内政上最大の課題となっている欧州諸国は独裁者エルドアン大統領がその防波堤になっていることを認識しているので、エルドアンを支持せざるを得ない。

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独裁政権でも維持できるのは、欧州が指示せざるを得ない状況にあるからですね! 

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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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