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2016/09/30配信分

グルーバル感覚

中国はなぜ強硬に領海権を主張するのか?【大前研一メソッド】

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中国が主張した九段線に、当たり前と言えば当たり前ですが、仲裁裁判所が法的根拠なしとしましたね。 素直に従わないのは分かっていますが、これから先、中国はどういったことを仕掛けてくるのでしょうか?

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まあ中国は反発するわな。 勝手に開発してきた方が悪いのだが、フィリピンとの交渉でどうなるか注目したいところだ。想定されることを考えてみるぞ!

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 国際仲裁裁判は、中国が主張する南シナ海領有権を否定 』
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中国が主張する南シナ海の領有権や行動は国際法に違反するとして、フィリピンが国連海洋法条約に基づいて申し立てていた仲裁手続きの裁定が、2016年7月、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所で下されました。

 

中国が主権を主張する独自の境界線「九段線」に国際法上の根拠がないと認定しました。中国は「仲裁裁判の判断は紙くず」と猛反発しています。国際司法の裁きが機能しなかった南シナ海の領有権問題はこの先、解決の糸口をうまく見つけることができるのでしょうか?大前研一に聞いてみましょう。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 中国はフィリピンに対価を支払って実効支配を強める? 』
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◆「中国が独自に主張する境界線『九段線』に法的根拠なし」との司法判断

 

南シナ海の領有権に関して、中国は独自に設定した境界線である「九段線」を主張している。九段線は中国南部の海南島付近から大きく南に下って、マレーシア近海で「牛の舌」のようにU字を描いて北上、フィリピン近海を通って台湾に至る9つの破線で地図上に描かれる(ゆえに「牛舌線」ともいわれる)。

 

九段線に囲まれた海域は南シナ海のほぼ全域に当たる。人工島を造成するなど中国が急ピッチで軍事拠点化を進める西沙諸島や南沙諸島、フィリピンや台湾と帰属を争っている中沙諸島東部のスカボロー礁も、すべて九段線の内側だ。それを根拠に、「我々には歴史的権利がある」と中国は海洋進出の正当性を主張してきた。

 

対して今回、国際的な仲裁法廷が示した判断は「九段線に法的根拠なし」。

 

中国が九段線の内側で主張する主権や管轄権、歴史的権利に国際法上の根拠はない、と断じたのだ。もともと中国は「仲裁裁判所に管轄権はない」として審理に参加してこなかったし、裁定が出ても無視する意向を示してきた。予想通り、全面敗訴に等しい裁定に中国はすぐさま「南シナ海の領土主権と海洋権益に関する声明」を発表して、「仲裁法廷の判決は無効で拘束力はなく、受け入れられない」と反発した。

 

一方、「南シナ海は中国の領海ではなく公海である」として「航行の自由」を主張する米国にとっては追い風の判決で、これを受け入れるように中国に求めている。またフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど南シナ海の領有を中国と争う国が揃っているASEAN(東南アジア諸国連合)では、中国と領有権問題を抱える国とカンボジアなど中国の影響力が濃い国との間で意見が対立、一枚岩で中国に圧力をかけられる状況にはなっていない。

 

◆中国、多数派工作で国際世論の一角を味方につける

 

国際法廷の判決には法的拘束力がある。中国もフィリピンも国連海洋法条約に批准していて、同条約に基づいて行われた仲裁裁判の判決を遵守する国際法上の義務を負っている。しかし国際法廷は判決を強制執行する権限がない。

 

結局、判決を御旗に遵守するように国際社会が圧力をかけるしかないのだが、中国は中国で「判決に従う必要はない」という自らの立場を支持する国を増やすべく多数派工作を展開している。国際法廷が判断を下したからといって、中国は簡単には引き下がらない。それが国際法の現実だ。ちなみに米国はいまだに国連海洋法条約を批准していない。

 

「2000年前から九段線の内側は我々のものだ」と中国は主張する。だが、歴史的権利の根拠とする九段線は、中華民国時代の1947年に領海を示すために作成された地図をベースに、中華人民共和国になった53年に書き直したものにすぎない。

 

中国の版図は時代によって大きく変わってきた。たとえば九段線の付け根にある海南島は、2000年前は「越」と呼ばれる国の一部で、漢民族が支配する土地ではなかった。遠く中近東にまで広がった元の全盛期を除けば、現在の中国共産党の版図が一番広いだろう。毛沢東時代に相当に版図を広げたが、急速な経済成長とともに今また中国は拡張期にある。彼らが国力にモノをいわせて版図を押し広げようとしているのは、境界線がほぼ固定化された陸地ではなく、太平洋やインド洋につながる「海洋の国土」だ。

 

◆西欧列強が所有する、飛び地のような領土を念頭に置いた中国の復讐か?

 

覇権国家には版図拡大の野心を剥き出しにする時期がある。大航海時代のスペインやポルトガルは大西洋の島々や中南米を植民地化した。その後、7つの海を支配したのが英国で、世界の至るところに英領は残っている。イベリア半島の南端、スペインと地続きのジブラルタルや、アルゼンチン沖合のフォークランド諸島は、今なお英領だ。

 

ドイツは第一次世界大戦に負けて日本が委任統治するまで縁もゆかりもないパラオを支配していたし、ニューカレドニアは今でも仏領。米国だってスペインを追い出して中南米の国々やフィリピンを実質的に植民地化していた。カリブ海に浮かぶプエルトリコが米国の準州扱いなのはその名残だ。

 

西欧列強が我が物顔でツバをつけた土地を自分の領土にしてきた時代、中国は収奪される側だった。その中国がようやく力をつけて覇権を狙う立場になって、失地回復すべく、領土的野心をあらわにしているわけだ。中国からすれば「西欧列強にやられたこと」をやりかえしているにすぎない。

 

歴史的権利を主張する九段線に法的根拠がないことぐらい百も承知。しかし「欧米列強だって歴史的権利のない飛び地のような領土を今でも持っているではないか。『オレのものだ』と2000年も言い張れば自分の領土になる」と中国は思っているのだろう。

 

◆九段線の根拠となる中国所有の「島」は、単なる「岩」との国際司法判断

 

今回の仲裁裁判所の判決は、中国が主張する九段線の歴史的権利をバッサリ否定しただけではなく、ほかにも注目すべき判断を下している。

 

中国は九段線を根拠に、南シナ海の7つの岩礁で人工島を造成して、滑走路や建造物を造るなど軍事拠点化を進めてきた。判決では、この7つの岩礁はすべて排他的経済水域(EEZ)が設定できる「島」ではなく、「岩」もしくは「低潮高地(満潮時は海面に没し、干潮時には海面上に出てくる自然の土地)」と認定したのだ。

 

「島」ならば、周囲に12海里の領海と200海里のEEZ、大陸棚が認められる。「岩」の場合は領海のみが認められて、EEZと大陸棚は主張できない。「人工島」と「低潮高地」は論外で、領海もEEZも大陸棚も認められない。自国のEEZでは海底資源などの開発ができる。だが、中国が埋め立てて人工島を造っている南沙諸島の岩礁が「岩」か「低潮高地」と認定された以上、EEZは認められず、周辺海域で資源開発する法的根拠を失ったことになる。

 

逆にミスチーフ礁やスカボロー礁などいくつかの岩礁はフィリピンのEEZの海域にある。そこで中国がフィリピンの許可を得ずに人工島を造ったり、フィリピンの漁業や資源調査を妨害しているのは「フィリピンの主権的権利の侵害であり、国際法違反」と仲裁裁判所は判じた。

 

フィリピンのEEZ内にある岩礁をめぐる裁定については、中国は守る可能性がある。「九段線に法的根拠なし」という裁定は、「歴史的に九段線は中国のものであるという根拠はない」と言っているだけで、九段線の海域の領有権に関しては何も触れていない。「中国は直ちに立ち退け」とは言っていないのだ。

 

しかしフィリピンのEEZ内にある岩礁を中国が実効支配しているのは「主権侵害であり、国際法違反」と明確に指摘している。フィリピンのEEZである以上、米軍が「航行の自由」作戦で艦船や航空機を派遣しても、中国は文句を言えない。

 

 

判決後、中国はフィリピン政府に対して判決を無効とすることに同意したうえでの話し合いを求めている。

 

フィリピンのドゥテルテ大統領は、「和解したいなら、フィリピンに有利な条件を持ってこい」と強気の姿勢を見せているが、いずれ話し合いに応じるのではないだろうか。

 

ドゥテルテ大統領は「麻薬密売人を射殺した警察官に報奨金を支払う」などと過激な発言するリーダーで、「フィリピンのドナルド・トランプ」と言われている。ドゥテルテ大統領は母方の祖父が中国系で中国と近い。彼の政治姿勢からすれば、中国を牽制しつつ交渉に応じて、金で解決する可能性は少なくない。

 

すなわち「売る」か、「使用料」を取って中国に貸し付けるのだ。金に糸目はつけない中国も平気で乗ってきそうで、「当事者同士で解決できたから」と判決をなし崩しにしようとするだろう。

 

 



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今回のポイントだ!
●南シナ海を巡り、フィリピンが申し立てた国際的な仲裁裁判は、中国の領海権の主張を認めなかった。しかし中国が裁判の判決に従う気配はない。
●中国は金で解決する可能性が高い。すなわち「売る」か、「使用料」を取ってフィリピンは中国に貸し付けるだろう。
●金に糸目はつけない中国は「当事者同士で解決できたから」と判決をなし崩しにするだろう。

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やっぱり金で解決しそうな気がすごくしますね! 

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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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