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2017/02/03配信分

グルーバル感覚 論理思考

大国の“エゴ”がイスラム国を誕生させた!?【大前研一メソッド】

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トランプ大統領が公約通り、大統領令を次々と出して、ついにテロ対策のために移民受け入れもストップしましたね…。さすがに裁判所が待ったをかけましたが、政府側は徹底的に争う姿勢を見せてます。 テロが頻発するようになった一番の原因はどこにあるんでしょうか? 移民丸ごと拒否してもテロはなくならないと思います。

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戦争をやっていないと自国の経済が立ち行かない国だからな。だから余計に敵を作る。 ISのようなテロリスト集団が誕生した背景には一体何があるのか、考えてみるぞ!

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 中東&アフリカの7カ国の国民・難民が米に入国できない悲劇 』
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トランプ米大統領が、テロ対策のために中東やアフリカの7カ国(シリア、スーダン、イラン、イラク、ソマリア、イエメン、スーダン)の国民に対して3カ月間の入国禁止と、難民の受け入れを一時停止する大統領令に署名しました。

 

良い例えではありませんが、便宜的に国家を臓器、イスラム過激派組織イスラム国(IS)を癌細胞とすると、臓器の概念がない癌細胞を取り除くために、正常な細胞も含めて肺や胃などを臓器の単位で摘出しているのと似ています。これは極めて西洋(医学)的な考えであるということを大前研一が解説します。

 

しかも悪いことに中東・アフリカを泥沼化させてISを出現させたのは当の米国の責任であることを棚にあげて米国はエゴ丸出しだと大前は非難します。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 「IS 対 国家」の噛み合わない戦いは終わらない 』
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◆ISに「国境」という概念はない

 

イラクとシリアにまたがる広大な地域を支配下に治め、2014年6月にカリフ制国家の樹立を一方的に宣言したイスラム過激派組織イスラム国(IS)はアブー・バクル・アル=バグダディ氏をカリフ(イスラム教の開祖である預言者ムハンマドの後継者であり、イスラム共同体の最高指導者)に奉じている。

 

バグダディ氏をカリフに仰ぐ世界のイスラム教徒はすべてイスラム共同体、イスラム国家の一員であって、カリフ制国家に「国境」という概念はないのだ。

 

一見すると古びた統治システムだが、国境を軽々越えていく現代のネット社会には実のところなじみがいい。ISはSNSや動画サイトを巧みに使ってイスラム共同体への回帰を訴え、「聖戦」への参加を呼び掛けている。

 

リクルーティング組織を世界の大都市に張り巡らせて、現地で虐げられているイスラム教徒などを「本国」に送り込んで戦闘訓練や思想教育を施す。彼らが帰国してテロを引き起こし、あるいはISの主義主張に共鳴した人間がホームグロウン・テロ(自国育ちのテロ)を起こすのだ。たとえ中東の支配地域を失っても、ネットと現実世界を巧妙に行き来するISの脅威が減じることはないだろう。

 

◆欧米列強が分割統治するために引いた人為的な国境線が紛争の元凶

 

中東というのはアレキサンダー大王のマケドニア王国やオスマン・トルコ帝国など、強大な征服者が支配していた時代もあるが、もともとは部族的な集団が緩やかに割拠していた土地柄だ。

 

20世紀に入って中東の砂漠の下に莫大な石油が眠っていることが判明すると、西欧列強が石油利権を求めて植民地支配に乗り出してくる。第一次大戦のどさくさに紛れて英国とフランスとロシアは秘密協定(サイクス・ピコ協定)を結び、衰退期にあったオスマン帝国の領土を分割統治することを勝手に決めた。

 

世界地図を見ると中東の国境線が直線的なのはこの名残だ。大国が分割統治するために引いた人為的な国境線によって民族や部族が分断されたことは、クルド人問題、ヤジディやコプトの異教徒問題など今日まで中東における紛争や悲劇の大きな要因になっている。

 

第二次大戦の前後から中東の多くの国は独立して植民地支配を脱したが、欧米列強が持ち込んだ国民国家の枠組みはそのまま残された。

 

◆石油権益とユダヤ・ロビーしか米国は頭にない

 

戦後、戦争で疲弊した欧州勢に代わって中東への介入を強めたのは米国だ。
米国の中東政策の基本は二つ。サウジアラビアとイスラエルを守ることだ。

 

米国がサウジを守る理由は石油権益である。サウジはサウド王家による王族支配の国であり、前近代的なイスラム法に則ってすさまじい人権侵害が行われている。しかし、民主主義を世界に輸出し、中国の人権侵害を声高に非難しておきながら、米国は石油権益優先でサウジの人権侵害や著しい男女差別には目をつぶって同盟関係を深めてきた。

 

一方のイスラエルは戦後、パレスチナに押し寄せたユダヤ人によって建国されたユダヤ人国家だ。自分が住んでいた土地に勝手に国境線を引かれて追い出された先住のパレスチナ人、周囲のアラブ諸国がこれに強く反発して、パレスチナ紛争が勃発した。

 

ユダヤ人対アラブ人、ユダヤ教対イスラム教という民族対立、宗教対立を内包したパレスチナ問題は中東における紛争の根源的な火種になっている。

 

強力なユダヤ・ロビーが政治経済の中枢を牛耳るアメリカにとって、イスラエルを守ることは外交ではなく内政問題である。

 

◆「自分たちが解を持っている」かのように振る舞う米国のエゴで混乱拡大

 

ISの台頭と米国の中東政策にも因果関係がある。

 

先々代の湾岸戦争を引き継いで、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「悪の枢軸」と決めつけてイラクを攻撃、サダム・フセイン政権を打倒した。確かにフセインは独裁者だったが、民族と宗教が複雑に入り組んだイラクを一つの国民国家にまとめあげていたのも事実だ。それを排除したために、イラクは分裂状態に陥った。

 

民主的に選ばれた多数派(イスラム教シーア派)のリーダーに統治能力はなく、フセイン時代には抑え込まれていたシーア派、スンニ派、クルド人の対立構造が表面化した。

 

一方、スンニ派のフセイン政権が倒されたことに危機感を抱いたのがサウジアラビアだ。サウジはスンニ派大国であり、隣国のイラクやイラン、シリアなど中東にシーア派勢力が広がることを嫌って、スンニ派の過激派組織を陰で支援してきた。それがISというモンスターに成長したわけだ。

 

さらにブッシュ政権がつくり出した混乱の芽を加速したのがオバマ政権である。攻撃目標をアフガニスタンに切り替えて(お尋ね者オサマ・ビンラディンが隣国パキスタンに蟄居していたので的外れな結果に終わった)、イラクから米軍を早期撤退させたために、イラクの混乱が拡大。その隙を突いて、それまで主にシリアで反政府活動を行っていたISがイラクに攻め込んで支配地域を広げたのだ。

 

チュニジアのジャスミン革命から始まった中東民主化にしても、カダフィを倒したリビアにしても、内戦に突入したシリアにしてもオバマ前政権はことごとく判断を誤って混乱を拡大した。

 

では、「どうするべきだったのか?」といえば、「最初から手を出すべきではなかった」というしかない。国民国家のフレームワークでしか考えられない欧米社会は少なくとも正解を持っていない。解を持っていないにもかかわらず、自分たちが解を持っているかのように振る舞った米国の中東政策が、今日の事態を招いたのだ。大国のエゴで広げた混乱は、大国の国民国家の論理では簡単には解決できない。

 

 

先進国を中心に150年ほど続いている国民国家(NATION STATE)という考え方と、イスラム系遊牧民にとっては違和感のないカリフ制との葛藤は武力では決着がつきそうもない。

 

サダム・フセインの下では国民国家の体裁を取っていたイラクも、今となってはいくつに分裂するのか予想もつかない。ユーゴのように複数の国家になるのか、カリフ制のISが霜降り肉みたいに混在するのか、が見通せない。

 

この問題に関して国連(UNITED NATIONS)が無力なのはまさにその名の通り、宗教や民族からは定義がはっきりしない「NATION(国家)の集合体」という安易な定義・命名から出発しているからではないかと思われる。混迷する中東で今まさに問われているのは「『国家』とは何か?」という根源的な問題なのである。

 

 



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今回のポイントだ!
●解を持っていないにもかかわらず、自分たちが解を持っているかのように振る舞った米国の中東政策が、ISというモンスターを出現させてしまった。
●国民国家のフレームワークでしか考えられない欧米社会は少なくとも正解を持っていない。
●「どうするべきだったのか?」といえば、「最初から手を出すべきではなかった」というしかない。
●先進国の国民国家という考え方と、イスラム系遊牧民にとって違和感のないカリフ制との葛藤は武力では決着がつきそうもない。

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国家の枠組みでテロリストと武力で対峙しても収集がつかないんですね! 海賊を撲滅させてすしざんまいのように、武力以外でテロを撲滅できるといいのですが。

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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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