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2017/04/14配信分

経営戦略

東芝を追い込んだ原発ビジネスに未来はあるか!?【大前研一メソッド】

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東芝が原発ビジネスの大ゴケによって経営危機を迎えていますけど、一体どうなってしまうんでしょうか? 震災の影響で原子力事業はやっぱりこれから伸びることはないのでしょうか?

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国内での原子力事業は厳しいことに変わりはないな! 今後の同事業はどういった方向に進むのか考えてみるぞ!

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 東芝、海外の原子力事業は撤退するも、国内の同事業は発展へ? 』
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東芝が(2017年3月期)第3四半期決算を発表しました。

 

第3四半期連結累計期間(2016年12月に終了した9か月間)の営業損益は、原子力発電システムののれんの減損損失7166億円の計上により、5763億円の赤字となりました。
(【資料】第3四半期決算 ―― 東芝)

 

一方で、東芝は国内原子力事業の売上金額について16年度1500億円を、19年度2000億円にすると強気の計画を打ち出しています。
(【資料】「今後の東芝の姿について」p.16参照 ―― 東芝)

 

東芝は海外の原子力事業は撤退するものの、国内の同事業を発展させる計画ですが、成否について大前研一が占います。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 国内に残る原発ビジネスは、廃炉&使用済み核燃料の最終処分のみ 』
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◆米WH社を高値掴みした挙句に経営できず巨額損失を計上

 

米国の原子力事業で7166億円もの巨額損失を計上し、一気に経営危機に陥った東芝。債務超過を避けるために、すでに売却してしまった東芝メディカルだけではなく、シェアトップの東芝テック、稼ぎ頭の半導体事業を東芝メモリとして分社化して同社の株式を切り売りすることなどを模索している。

 

主力事業の原発事業に関しては米原子力発電子会社「ウェスチングハウス(WH)」に米連邦破産法11章(日本の民事再生法に相当)を適用し、原発の建設から撤退する。

 

それに伴い損失額が1兆円程度に膨らむ可能性がある、と伝えられているが破産しなければ損失が確定しないために今年の株主総会は乗り切れない、などの問題を抱えている。

 

巨額損失の原因になったのは東芝の米国子会社であるWHが買収した米原子力サービス会社ストーン&ウェブスター(S&W)ののれん代(M&Aの際、買収額から買収先の純資産を差し引いた額)だ。

 

もともとのれん代は100億円程度と見積もっていたが、昨年末にS&Wの正味の資産価値を再評価したところ数千億円規模の損失が判明、債務超過となる7000億円規模となることが2017年4月に明らかになった。

 

これは経営能力もないのにキャッシュだけは持っている日本企業が陥りやすい世界化の罠の典型的なパターンである。WHのような海外の名門企業を買って子会社化したのはいいが、自分たちで経営し切れず、子会社幹部にいいように振り回されて最後には不正会計やパワハラが発覚、突如として巨額損失が表面化するのだ。

 

東芝としてはWHを切り離したうえで今後は原発事業を縮小していくしかないだろう。これは東芝に限ったことではなく、原発ビジネスの衰退は世界的な傾向だ。

 

◆原子炉を造れる先進国のメーカー5社はいずれも苦戦中

 

今、原子炉を造れる先進国のメーカーは5社くらいしかない。
東芝を除くと以下のメーカーだ。

 

(1)仏アレバ社
欧州では仏アレバ。同社は世界最大手の原発メーカーだが、世界的な原発建設の停滞と建設コストの上昇を背景に経営が悪化、仏政府の救済を受けて経営再建の途上にある。仏政府の要請に応じて三菱重工業が資本注入したが、今後は廃炉専門の会社になっていくと思われる。

 

(2)米ゼネラル・エレクトリック(GE)社
米GEも原発事業に前向きな姿勢は見えない。

 

(3)日立製作所
そのGEと原子力関連の合弁会社をつくっている日立製作所も米国の原発事業で大幅な損失を出している。

 

(4)三菱重工業
三菱重工にしても米カリフォルニア州南部にあるサンオノフレ発電所の蒸気発生器のトラブルに絡んだ訴訟問題で約1億2500万ドル(約137億円)の賠償の仲裁裁定を国際商業会議所(ICC)から受けた。(合計66億6700万ドル(約7300億円)の請求を受けて訴訟になっていた)。

 

◆世界で原発需要があるのはロシアと中国くらい

 

世界の原発需要はどうかといえば、欧州ではドイツやスイスが原発の全廃を決定するなど脱原発の傾向は変わらない。英国だけは複数の原発プロジェクトを進めていて、日立と東芝も受注に絡んでいる。ただし、資金的な問題もあって計画は遅れ気味。

 

原発に前向きなのはロシアと中国で、それぞれ自力で造れる。エネルギー需要が増大する一方で温暖化対策が求められている新興国では総じて原発に対する関心が高い。しかし資金不足と周辺住民の反対運動からベトナムの原発建設計画は白紙撤回された。やはり反対の声が強まっているリトアニアや政情が不安定なトルコなどでも、計画に大幅な遅れが出ている。

 

世界一の原発保有国である米国にしても、石炭や石油ガス重視のトランプ政権の誕生で今後の原発建設はほぼなくなったと見ていい。昨年にはテネシー州で新規原発が20年ぶりに商用稼働したし、ほかにも米原子力規制委員会(NRC)の認可を得ているプロジェクトが8つぐらいある。

 

しかし初期投資が巨額なうえに、3.11以降、安全基準が厳しくなって建設コストが上昇したために電力会社の資金繰りがつかず、なかなか完工まで至らない。

 

東芝がWHを6000億円で買った時点(06年)では5、6基の原子炉は造れる見込みだったが、いずれの原発もまだ竣工していない。工期が延びれば人件費は膨らむし、資材などの建設コストも上昇する。

 

これに対応するためにWHはS&Wを買って、「捌いてみたら内臓が腐っていた」というわけだ。WH買収ののれん代を損金としてきちんと償却してこなかったうえに、孫会社であるS&Wのロスが重なって、東芝が抱えた損失リスクは1兆円に上る。

 

◆日本の建設中の3基はほぼ完成済み。計画中の8基は頓挫か?

 

一方、日本国内の原発の建設状況はどうか。原子炉の数でいえば建設中が3基で、計画中のものが8基ある。

 

建設中は青森県の大間原発1号炉(電源開発)と東通原発1号炉(東京電力)、島根県の島根原発3号炉(中国電力)はほぼ完成している。工事が凍結している原発については、原子力規制委員会が「工事再開OK」を出しても、地元が同意しない。住民の厳しい公聴会や住民訴訟を乗り切って竣工にこぎ着けることはまずありえないと思う。

 

計画中の原発はもうまったく前に進む可能性はないだろう。地元に金をばらまいて土地を造成したり、工事用道路を造ったりしたケースもあるが、そこから先は予算もつかないし、目処が立たない。これは私が日本中をサーベイして得た感触だ。

 

 

国内の原発ビジネスの先細りはもはや避けられない。

 

日立はかろうじて踏みとどまれるかもしれないが、東芝や三菱重工が原子力事業に傾斜することはもはや株主が許さないだろう。ただし原発の廃炉とか使用済み核燃料の最終処分というニーズは残されていて、それは国としてもやらざるをえないから、ある意味では“長期・成長産業”とも言える。

 

新しい原発は造れないが、日本にある58基の原子炉の廃炉を30年~50年かけて根気強くやれば、東芝も三菱重工もメシのタネはある。もっとも、そのような仕事しかない原発ビジネスに若く優秀な人材が集まるとは到底思えない。

 

この根気のいる仕事を誰が、誰の金でやっていくのか、再稼働の前に国が解決しておかなくてはならない問題は重い。

 

 



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今回のポイントだ!
●東芝は米WH社をM&Aしたものの、経営しきれずに7166億円もの巨額の赤字を計上し経営危機に陥っている。
●原発の新規建設に前向きなのは世界の中でもロシアと中国ぐらい。国内外の原発ビジネスの先細りは避けられない。
●国内の原発ビジネスは廃炉や使用済み核燃料の最終処分というニーズしか残されていない。

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新規建設にニーズがないとなるとやっぱり厳しい産業ですね。 担い手もいなそうな感じがしますし。

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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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