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2017/06/16配信分

経営戦略 財務

成功率5%!日本企業の海外M&Aの実体(前編)【大前研一メソッド】

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日本郵政が民営化後、初の赤字に転落してはがきの郵便料金を改定しましたね。なんか海外の会社を買収したツケが影響しているみたいですけど、日本企業の海外M&Aがうまくいかない事例が相次いでいるような気がしますけど…

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海外M&Aのほとんどはうまくいっていないな! 日本企業に限らずだが、海外の企業を買収してうまくいっている例が少ない。なぜこうなってしまうのか解説していくぞ!

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 日本企業の海外M&Aは鬼門? 』
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日本郵政は5月15日、2017年3月期の連結決算を発表し、2年前に買収したオーストラリアの物流子会社トールの「のれん代」など約4000億円の損失を一括で減損処理しました。これに伴い日本郵政は2007年の民営化以降、初の赤字転落となりました。

 

日本郵政に限らず、このところ日本企業が海外M&A(合併・買収)に失敗して大損失を出す例が後を絶ちません。たとえば、東芝は買収した米国の原発会社ウェスチングハウス(WH)の経営破綻によって2017年3月期決算の赤字が9500億円に膨らみ、株主資産ベースで5400億円の債務超過に陥る見通しとなっています。

 

住関連サービスのLIXILは、ドイツの水栓金具最大手グローエを買収した際に同社の子会社として一緒に傘下に入った中国企業ジョウユウの破産に伴い最大662億円の損失が生じ、2016年3月期決算で6年ぶりの赤字に転じました。

 

過去にも、武田薬品工業が米国のバイオ企業ミレニアム・ファーマシューティカルズとスイスの製薬会社ナイコメッド、日本板硝子が英国の板ガラス世界大手ピルキントン、松下電器産業(現・パナソニック)が米ユニバーサル映画、三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを買収した結果、軒並み巨額の損失処理を余儀なくされています。

 

日本企業の海外M&Aは鬼門のように見えます。「失敗するべくして失敗した結果」なのだとM&Aに詳しい大前研一は指摘します。大前学長の分析を2回にわたって解説します。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 優秀な会社はそもそも売りに出ない 』
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◆M&Aは最も難しい経営戦略の一つで、世界的にも成功例は少ない

 

なぜ日本企業の海外M&Aはうまくいかないのか?
うまくいかない理由は以下のように大きく三つある。

 

(1)そもそもM&Aは難しい 
まず、そもそもM&Aは最も難しい経営戦略の一つであり、世界的に見てもうまくいった例はあまりないということだ。米企業と欧州企業のM&Aはもとより、米企業同士や欧州企業同士のM&Aでも、しばしば失敗している。

 

たとえば、ドイツのダイムラー・ベンツは米国のクライスラーを併合したが、両社の経営方針や技術思想に大きな違いがあったため、結局、クライスラー部門を米国の投資会社サーベラスに売却した。

 

(2)買った会社を経営するのが非常に難しい
次に、資金的には買えても、買った会社を経営するのは非常に難しい。卑近な喩えだが、「あの夫婦はうまくいっていないから自分が旦那の代わりになってやろう」と乗り込んでも、実際は奥さんが思ったほど優しくなかったり、子供がグレていたりして、一緒に暮らしていくのが容易ではないという状況になってしまうのだ。

 

つまり、その会社のどこに問題があるのか、商品なのか、経営陣なのか、社員なのか、取引先なのかといったことが、外から見ている時はわからないのである。

 

(3)相乗効果を発揮するのが難しい
さらに、シナジー(相乗)効果を生むのはもっと難しい。M&Aをしても1+1=2のままなら、最初から別々に経営したほうがよいという話になる。二つの会社が一つになることによって、たとえば売り上げを2.3に増やしつつ、コストを1.7に抑えられれば、利益が0.6増える。それがシナジーというものだ。

 

しかし、私が見る限り、合併してシナジー効果があったケースはほとんどない。下手に被買収企業のコストを削ろうとすれば、反発が起きてサボタージュしたり、都合の悪い数字などを隠したりする。

 

また、A社とB社が合併したからといってA社のセールスマンにB社の商品、B社のセールスマンにA社の商品を一緒に売らせて売り上げを増やそうとしても、現実には至難の業である。営業や販売というのは、それほど単純なものではないからだ。

 

◆M&Aを仲介する投資銀行が“諸悪の根源”?

 

以上のように、そもそも海外M&Aは高度なマネジメントやノウハウが必要だが、特に日本企業がよく失敗するのが、米国などの投資銀行を絡ませたケースである。

 

私が40年間にわたり経営コンサルタントとして企業を見てきた中で、M&Aで失敗した事例において、投資銀行が“諸悪の根源”になっている。

 

私の印象では、投資銀行が仲介する海外M&Aの成功確率は5%以下である。つまり、95%は手を出さないほうがよい案件なのだ。にもかかわらず、多くの日本企業が投資銀行が持ちかけるM&A話にひっかかる。

 

なぜか?

 

たとえば米国市場に本格参入を考えている日本企業があるとすると、投資銀行から「米国には御社にとって目の上のたんこぶの強力な競合相手がいますが、我々の情報では、その会社の株主が『売ってもいい』と言っているんですよ」と誘いの手が伸びてくる。日本企業の経営陣は、「業界で憧れの対象だった欧米の大企業が買えるのか!?」と浮き足だつ。

 

あとは羽田空港からプライベートジェット機で米国に連れて行かれ、現地ではストレッチ・リムジンが迎えにきて、豪華なディナーで歓待される。帰る頃には仮契約の書類にサイン……という塩梅だ。

 

投資銀行の手口は十中八九、このパターンである。そんなVIP待遇を経験したことがない日本企業のサラリーマン社長は、これにコロッと騙されてしまうのだ。

 

しかも、多くの場合、相手企業の経営者と話してみると、こちらの考えをよく理解している、気に入ったので引き続き彼に経営を任せよう──となる。いわゆる“ゴールデン・カフリンクス(金のカフスボタン)”と呼ばれるもので、買収の際に、たとえば「現経営陣は2年間クビにできない、クビにする時は巨額の違約金を払わねばならない」というような身分保証契約を結ぶ
ことを言う。

 

これが大きな問題で、蓋を開けてみたら経営者はサボるし、社員は不満だらけ、というケースばかりなのだ。

 

 

そもそも、その経営者が本当に優秀だったら、会社が売りに出るわけがないのである。しかし、日本側の社長は自分が続投を頼んだ手前、社員の経営者批判に耳を傾けようとしない。投資銀行に助けを求めても、彼らのビジネスは“焼き畑農業”のようなものなので、M&Aの成功報酬をもらったら後は知らん顔で、次の森を焼きにかかっている。日本側の社長はなすすべがなくなってしまうわけだ。

 

M&Aでは、デューデリジェンス(事前に投資対象企業の財務状況や収益性などを精査して資産価値を査定すること)が重要とされる。だが、日本企業はたいがいデューデリが甘くなるか、子会社・孫会社にまでは査定が及んでいない。東芝やLIXILなどの失敗も、それが命取りになった。

 

 



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今回のポイントだ!
●投資銀行が仲介する海外M&Aの成功確率は5%以下。つまり、95%は手を出さないほうがよい案件である。
●多くの日本企業が投資銀行が持ちかけるM&A話にひっかかる。
●M&Aでは、デューデリジェンスが重要とされる。だが、日本企業はたいがいデューデリが甘くなるか、子会社・孫会社にまでは査定が及んでいない。

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成功率がそんなに低いなんて… 騙されて買収案件に乗せられてしまっているんですか。一体どうやってこの巧妙な手口が作られているのでしょうか?次回楽しみです!

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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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