BIZTIPS>BIZトピックス>神戸製鋼グループの品質不正ドミノ倒しはなぜ起きた?【大前研一メソッド】

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2017/12/15配信分

組織人事 経営戦略

神戸製鋼グループの品質不正ドミノ倒しはなぜ起きた?【大前研一メソッド】

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日本の製造業といえば高品質というイメージがありましたが、老舗メーカーによる品質不正問題が発覚しましたね!衝撃的な出来事だったんですけど、一体どうしてこんなことがまかり通るようになってしまったんでしょうか?

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長年の商習慣によって、老舗メーカーなら安心という常識が通用するようになったのかもしれないな! 今回の長期にわたる不正には一体どこに問題があったのか考えてみるぞ!

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■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 品質データ不正問題の神戸製鋼に莫大な代償が待ち受ける 』
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神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)の品質データ不正問題は、アルミ・銅事業部門から始まって、主力の鉄鋼事業部門や機械事業部門などでも発覚しました。

 

データ改ざんなどの不正が、長期にわたって組織ぐるみで行われてきた実態が明らかになりました。不正の対象になった部材を使用している国内外の企業は多数に及び、今後、リコールや部品交換の費用請求、損害賠償リスクを含めると近い将来どれだけ莫大な代償を支払うことになるのか、見当もつきません。

 

すでに国際標準化機構(ISO)の国際規格認証や、日本工業規格(JIS)規格認証が一時停止もしくは取り消された工場も存在し、神戸製鋼の前途には厳しいものがあります。どうしてこのような取り返しのつかない不正がまかり通ってしまったのか。大前研一学長の意見を聞いてみましょう。

 

 

■ 大前研一学長の見解 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 危機感が乏しい神戸製鋼の体質、取引先も品質不正を見抜けず 』
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◆長年の商習慣が、受け入れ検査をすり抜けさせた?

 

不正が発覚したきっかけの多くは内部告発で、今回の事件もそうである。取引先企業はなぜ今まで気づかなかったのか、という疑問もわく。通常、工業製品は強度など顧客と取り決めた技術仕様に基づいて購買契約を交わす。スペックに適合しているかどうか出荷側は検査するし、顧客も受け入れ検査を行う。

 

おそらく、神戸製鋼と長らく取引しているうちに、受け入れ検査をスキップするようになっていたのだろう。受け入れ検査もコストがかかる。Aランクの納入業者は検査なし、Bランクは抜き打ち検査、Cランクは全数検査――といった受け入れ体制になっていたのではないか。中国辺りから輸入する部材は全数検査しても、付き合いの長い神戸製鋼の部材は検査がスキップされてきた。不正問題の裾野が広がった背景には、そうした商習慣上の側面もあったのだろう。

 

◆不正ドミノの元凶はQAの欠落

 

一方で、「神戸製鋼の不正ドミノの元凶は何か?」と問われれば、クオリティ・アッシュアランス(QA)という発想の欠如が大きいと私は考える。

 

クオリティ・コントロール(QC)は日本の製造業の強みとしてよく知られているが、QAは馴染みが薄いかもしれない。「品質管理」のQCに対してQAは「品質保証」と訳されることが多い。

 

QAとは会社の外側から第三者の目線で、製品やサービスのクオリティを検証、ユーザーに保証していく活動体系を指す。

 

例えば、自動車会社がニューモデルを市場に投入する予定があると仮定しよう。各種のテストをクリアして製造部門側に立つQC担当者が「基準を満たしている」と判断しても、市場・株主側に立つQA担当者が「この車を当社のブランドをつけて市場に投入するには○○の点でまだ十分とは言えない。十分なテストデータが出るまで出荷を控えるべきだ」と判断するケースがある。

 

新製品をリリースするか否か、最終判断は四半期ごとの業績を上げたい社長ではなく、企業の長期的な名声の維持に責任を持つQA担当者が決める。

 

もう少しマイルドな言い方をすれば、社長といえども、QA担当者の懸念を無視して突っ走ることがないように会社としての仕組みを持っていかなければならない。

 

組織図的に言えば、各事業部の中にQC担当者がいるのに対して、QAは経営トップの直轄である。そして、市場へのリリースに関しては社長よりも上の権限を持つ。

 

したがって「今期の売上目標を達成するためにリリースしろ」とか「事業計画でこうなっているからリリースしろ」と事業部長が騒いでもQA担当者が明確なデータと理由をもって「NO」と言えばそれまでである。経営トップも逆らえない。

 

トップは製造物責任を負っているから欠陥のある商品はリリースできない。しかし、QC上の欠陥はなく、会社のためになる商品でも、顧客や消費者のためにならないことが世の中にはまま存在する。この商品をリリースしたらどのような使われ方をするのか、あらゆる場合を想定して品質保証するのが、QAの役割なのだ。

 

そうはいうものの、実際にQAがリリースに「待った」をかけるようなケースはそう多くはない。QAの出る幕は5年に1度もあればいいほう。それでもかつてはQAの重要性を認識していた良心的なメーカーがたくさん存在した。

 

社長や事業部長に直言し、時には販売計画をストップするのだから、QAは社内的には嫌われる存在だが、万が一の時にはそれが命綱になる。ところが「失われた20年」のうちに組織変革を模索したり、コストカットを重ねていくうちに、日本企業の組織図からQAがなくなったり、存在していたとしても盲腸のような無用の長物になって機能を果たさなくなった。経営が力を持ってくるとQAが弱まるという側面もある。

 

◆7事業を展開するという日本有数の多角化経営の弱点が露呈

 

神戸製鋼の場合、組織構造上の問題も指摘しておく必要がある。神戸製鋼は日本でも有数の多角化した会社だ。鉄鋼、アルミ・銅、建設機械、機械、エンジニアリング、溶接、電力と7事業を展開している。

 

鉄鋼事業だけを見ると神戸製鋼の世界シェアは極めて小さい。生き残りを考えると中国の鉄鋼会社に身売りもやむなしと言える。それでも神戸製鋼が1社単独でやっていられる理由は多角化にある。

 

世界の大鉄鋼メーカーには対抗できなくても、それぞれの事業で少しずつ利益は出ているし、上客もついている。「よくやっている」というのが経営陣の認識なのだ。

 

今回の不正問題は取締役会で報告されて議論しながら、神戸製鋼は発表を控えてきた。取締役会で取り上げた重大事項は直ちに開示する義務がある。これは明確なコンプライアンス違反であるにもかかわらず、上層部で危機感が共有されていなかった。危機感が乏しい理由の一つは、多角化の弊害としてよく言われることだが、それぞれの事業部門がタコツボ化してしまうからだ。

 

事業部制というのは、一見すると効率的なシステムのように見えるが、人事交流がない場合には、「会社全体のことを理解して会社のためにやっていこう」という人材が出てこない欠点がある。全体を理解していないから、なかなか危機感も持ち得ない。

 

 

神戸製鋼の不正問題の根幹には組織の構造的な問題と事業部間の人事交流がないというタコツボ化がある。そこにQAの“盲腸化”という仕組みの問題が重なったのだろう。多角経営の場合、QAは自立会社である事業部門ごとに置かれるのが普通で、神戸製鋼も事業部門ごとにQAがいたはずだ。

 

QAにしっかり権限が与えられていればいいが、利益優先の事業部門というタコツボの中では、QAは厄介者扱いされる。いつの間にか盲腸化して、事業部長の権限の中に埋没化してしまったのだろう。

 

 



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今回のポイントだ!
●神戸製鋼所の品質データ不正問題が、アルミ・銅事業部門から始まって、主力の鉄鋼事業部門や機械事業部門などでも発覚した。
●品質データ不正問題の根幹には組織の構造的な問題と事業部間の人事交流がないというタコツボ化がある。
●組織変革を模索したり、コストカットを重ねていくうちに、組織図からQAがなくなったり、存在していたとしても盲腸のような無用の長物になって機能を果たさなくなったのだろう。

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たまにしか機能していないと思われてしまうQAが邪魔者扱いされてしまった結果の悲劇だったんですね! 

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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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