BIZTIPS>BIZトピックス>イランに対する制裁は石油危機&軍事衝突の火種【大前研一メソッド】

BIZトピックス 話題のビジネスマナーや、時事問題を大前研一やMBAホルダーの視点で鋭く解説。あなたの成長へのプロセス作りを後押しする、ビジネストピックス集。

2018/10/05配信分

グルーバル感覚

イランに対する制裁は石油危機&軍事衝突の火種【大前研一メソッド】

熊画像
上部枠

トランプ大統領率いる米国が、イランとの核合意からの離脱を表明したようです!この決断は各国にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

下部枠
矢印
人画像
上部枠

そうだな!すでに第1段階の制裁は発動されていて、場合によっては日本にも影響が及ぶ可能性があるんだ。今回の表明を受けて、喜んでいる国はどこだろう?解説していくぞ!

下部枠
矢印

 
■ ビジネストレーニングの種 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 米、イラン核合意から理不尽な離脱 』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
2018年5月に米トランプ政権は主要6カ国(米英仏中露の国連常任理事国+ドイツ)とイランによって2015年に結ばれた核合意からの一方的な離脱を表明しました。
 
この核合意はイランが核開発の大幅な制限を受け入れる代わりに、欧米の経済制裁を解除するというものです。これをトランプ大統領は弾道ミサイルの開発が制限されていないことなどを理由に「現在の合意内容ではイランの核開発を阻止できない」として離脱を宣言しました。
 
査察役のIAEA(国際原子力機関)はイランが核合意を順守しているとの報告書をまとめていますし、他の当事国も合意継続を訴えて米国の一方的な合意破棄を批判しています。ですがトランプ大統領はまったくお構いなし。イランへの経済制裁の一部を再開する大統領令に署名して、「史上最強の制裁を科す」と言明しました。
 
イラン制裁の再開を巡る最新情勢を大前研一学長に解説してもらいます。
 
 
■ 大前研一学長の見解 ■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 イラン封じ込めに喜ぶのは、イスラエルとサウジだけ 』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
◆イラン産原油の輸入停止に対抗し、ホルムズ海峡封鎖の反撃も
 
米国のイラン制裁は90日(18年8月6日)、180日(18年11月4日)という2段階の猶予期間が設けられている。第1段階はすでに発動して、イランによる米ドルの購入・取得、金などの貴金属や鉄鋼、アルミニウム、石炭などの取引が制裁対象になった。外国企業が旅客機や部品を輸出したり、イランの自動車産業に関わったりすることも禁じられて、これを破った外国企業も制裁対象とされる。
 
第2段階の18年11月4日以降は、いよいよイランの輸出収入の8割以上を占める石油関連の取引に対する制裁が始まる。このデッドラインに向けて米国とイランの対立は緊張度を高めるだろう。イラン産原油の輸入停止を呼びかける米国に対して、イランはホルムズ海峡の封鎖をほのめかしている。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の大動脈であり、日本が輸入する原油の7~8割はホルムズ海峡を通過する。
 
イラン産原油の輸入ができなくなった場合、サウジアラビアやクウェートが肩代わりすると言っているが、サウジの原油もクウェートの原油も、同じく依存度の高いアラブ首長国連邦の原油やカタールのLNG(液化天然ガス)もすべてホルムズ海峡を通ってくる。イラン産原油を輸入すればペナルティが科せられるし、米国の理不尽な要求に日本は同調せざるをえない。
 
禁輸が広がって原油が輸出できなくなったイランがホルムズ海峡を封鎖すれば、オイルショックの再来もありうる。ホルムズ海峡の封鎖を米国が軍事力で阻止しようとすればイランとの本格的な戦争に発展しかねないわけで、情勢は予断を許さない。
 
◆トランプ大統領にとって一石二鳥のイラン制裁
 
制裁カードが大好きなトランプ大統領にとって、イランぐらい制裁してメリットのある国はない。
 
イラン核合意はオバマ前大統領がまとめあげた外交成果であり、トランプ大統領は大統領選中から否定してきた。しかも米国の離脱を非難し、なおも核合意を継続するフランスやドイツの企業がイラン制裁でひっくり返って、マクロン大統領やメルケル首相が苦虫を噛みつぶすとなれば、これはトランプ大統領としては小気味がいい。
 
そのうえ、イラン産原油がストップすれば、対米貿易黒字を“小狡く”稼いでいる同盟国の日本や韓国にもお灸が据えられる。イランの原油を一番輸入している中国にも打撃を与えられるかもしれない。イラン産原油への依存度が高いインド、韓国、トルコなども窮地に立たされているが、トランプ大統領にとっては“知ったことか”程度であろう。
 
◆イラン封じ込めで、米国はイスラエルとサウジアラビアと利害が一致
 
トランプ政権の核合意離脱、イラン制裁は米国の国内問題という見方もできる。トランプ大統領はユダヤ系の大金持ちから巨額の献金を受けている。娘のイヴァンカ氏もその夫のクシュナー氏もユダヤ教徒で、トランプ政権はユダヤロビーの影響力が非常に強い。在イスラエルの米国大使館をエルサレムに移転して、エルサレムを首都認定したトランプ大統領をユダヤロビーは絶賛した。
 
イスラエルにとって中東最大の敵は大国イランだ。イスラエルのネタニヤフ首相はイランが秘密裏に核開発を進めていると確信的に疑っていて、イランの核の脅威を取り除くことは安全保障上きわめて重要と考えている。だからネタニヤフ首相はトランプ政権の核合意離脱を強く支持した。中間選挙をひかえたトランプ政権としても、国内のユダヤロビーに対する大サービスになる。
 
もう1つ、米国の核合意離脱を歓迎した国が、サウジアラビアである。イスラム教スンニ派の大国であるサウジが仮想敵国にしているのは、イスラム教シーア派の大国イランだ。宗派対立という構図を抱えながらも、サウジとイランは対立と接近を繰り返してきた。
 
これまでサウジとイランが直接戦火を交えたことはないが、レバノン、イラク、シリアなどで代理戦争を展開してきた。現在の主戦場はイエメンで、イランが後押しするシーア派武装組織のフーシ派とサウジが主導するアラブ連合軍が激しい内戦を繰り広げて泥沼化している。
 
ところで、もともと石油権益を求めるアメリカとサウジは同盟関係にあったが、オバマ前大統領がイランと核合意を結んだことで両国関係が冷え込んでいた。トランプ大統領は就任後、最初の外遊先にサウジを選んで関係修復を図り、今やサウジの揺るぎない友好国になっている。
 
イスラエルとサウジとトランプ政権は完全に気脈を通じていて、イラン封じ込めを共通目標にしているということだ。
 
 
 
イランは米国による制裁再開で通貨が暴落し、物価も上昇、国民生活に影響が出ている。ロウハニ大統領に対する反発も強まっていて、これが民衆蜂起による政権交代につながる可能性もある。あるいはイランがロシア、トルコ、中国などに接近して、米国の被制裁国同士で関係を深めていくことも考えられる。
 
トランプ大統領の米国は、中東の火薬庫の視界を一気に不透明にしたが、仲良しイスラエルとサウジにそこまでサービスする価値があるのか、米政権に賢者が残っていれば考えてもらいたいものだ。
 
 



人画像
上部枠

今回のポイントだ!
●イランからの原油輸入禁止の制裁は“中東の火薬庫”に点火することに等しい。
●イランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切れば石油危機&軍事衝突の危機もありうる。
●イランがロシア、トルコ、中国などに接近して、米国の被制裁国同士で関係を深めていくことも考えられる。

下部枠
矢印
熊画像
上部枠

ホルムズ海峡が閉鎖されてオイルショックになったら大変です…日本への影響は避けられません!米国に賢者が残っていることを期待しましょう!

下部枠
矢印
一票を!

今後のサイト作りの参考にさせて頂きます。

役立った!
同一カテゴリのトピックスを読む
MBA診断

本サイトのBIZトピックス・ビジネステンプレート・ビジネス用語集は、ビジネス界の第一線で活躍する大前研一が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学大学院が提供しております。

【無料】9日間でカフェ経営メルマガ

<ステップメール>経営学の要諦を物語で学ぶ!定年退職した父親は元公務員。ビジネス経験ゼロの父が、一流の経営者になるまでの感動のストーリー

BIZTIPSとは?
close

BIZTIPSは、ビジネスに関する様々な情報を集約したビジネスパーソンの知的給油所です。現在進行形で起こっている諸問題、疑問に対するプロの見解や最新のビジネストピックスなど、必読情報満載のポータルサイトです!

BIZまとめ
役立つ5つのコンテンツ
BIZトピックス
BIZ用語集・テンプレ
BIZライブラリ
BIZリファレンス
検索人気ワード

バナー

バナー

バナー

BIZクイズ一問一答!

問題

特性要因図とも呼ばれる対象となる特性と影響を及ぼす種々の要因の関係を整理した図を何という?

ビジネスの第一線から最新情報を配信中!
本サイトは日本を代表する経営コンサルタント・大前研一氏が学長を努めるビジネス・ブレークスルー大学大学院が提供しております。
ビジネスの第一線で活躍する講師陣ならではの最新のビジネス情報を配信中です。

大前研一

大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

PAGE TOP