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2012/10/03配信分

グルーバル感覚 経営戦略

テレビ東京のアニメ著作権問題への奇策

テレビ東京が、中国の違法コピーに対し、逆転の発想で成果を出しています。

今回の【MBAホルダーの視点】では、アニメ著作権問題にヒントを与えてくれたテレビ東京の対応策を取り上げて、考察してみたいと思います。

 

まずは、そもそもの背景として中国におけるアニメ事情を紐解いてみましょう。

 

中国のアニメ制作の歴史は、1956年にアニメ制作会社が上海に設立された時から始まります。

 

それから1980年代には日本の『鉄腕アトム』『一休さん』がCCTV(中国中央電視台)で放映され、1990年代は『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『セーラームーン』『スラムダンク』『クレヨンしんちゃん』などの「日本動漫」が、中国を席巻しました。その原動力となったのは、著作権を無視した「海賊版」でした。

 

当時の中国政府は、日本動漫にはメッセージ性が無いとして放置していましたが、やがて若い世代への日本文化の浸透に危機感を持ち、2004年に『アニメ産業振興策』を打ち出し、「西側の退廃した文化に反対」、「合弁企業は中国側が主導権」、「国産アニメブランド確立」、「国産アニメ比率60%以上」という政策を連打します。2006年から、17:00~20:00の外国制作アニメ放映を禁止し、2008年には、これを17:00~21:00まで拡大。国産アニメ比率を70%以上としました。

 

さらに、中国政府は全国各地に『国家動画産業基地』を設立し、2008年までに20地域でアニメ制作企業を指定。大学でのアニメ専門学科新設を進め、2005年には学生数が46万人を超えました。こうして、2004年には国産アニメ制作時間が363時間だったものが、2011年には4,354時間(385タイトル)(626億円)と12倍に増加し、生産量(時間)世界一となりました。

 

しかし、中国アニメは、ストーリーが単調、キャラクターの造形が粗雑、低コストで作れるフラッシュアニメが多く、質の低い作品が氾濫しているという批判があります。それを受け、中国政府は「独創性、ブランド力強化で輸出拡大」「アニメ産業ビジネスモデルとして一気通貫で、テレビ・映画・DVD・キャラクターグッズの多面展開」「一律支援から選択支援」といった目標を掲げるに至りました。
一方、日本のアニメは、2006年の2,259時間(279タイトル)をピークに年々減少し、2011年は1,585時間(220タイトル)となっています。(出所:日本動画協会データ)

 

日本のアニメ業界は、制作費の80%が人件費とされ、海外に作画や仕上げを下請けに出す例が多く、制作費の下落、アニメーター志望の若者減少、低い報酬、テレビ局と広告代理店への利権集中など、多くの問題を抱えています。
苦境に立たされる日本のアニメ業界ですが、中国では多くの支持を集めています。なぜ中国で日本アニメは人気があるのでしょうか?

 

中国の若者の言葉を借りると、日本動漫の魅力とは、ストーリー性、作画、雰囲気だと言います。

 

その人気を受け、中国政府は規制を強め、テレビで中国製アニメが占めるようになりました。しかし、人気の日本動漫はテレビ放映からインターネット配信へシフトし、放映から数時間後には翻訳字幕付きで、違法アップロードされてしまう状況に陥っています。
そんな中、多くの人気アニメ番組を持つテレビ東京が、奇策を打ち出しました。

 

2011年12月から、人気アニメ『NARUTO(ナルト)』『BLEACH(ブリーチ)』『SKET DANCE(スケットダンス)』を、放送の1時間後に中国語字幕とCMを付けて、中国の大手動画サイト『土豆(トゥードウ)』に配信すると発表しました。さらには、過去に放送されたシリーズ約2,000話のアーカイブも提供しました。

 

これによって違法コピーが存在意義を失い、徐々に違法アップロードが減少し、違法アップロードがゼロになった作品もあると言います。さらには、『土豆』との独占契約を武器に、違法配信サイトへのコンテンツ削除要求と、『土豆』を中心として違法配信サイトへのリンク削除を進め、17の違法配信サイトの半数以上をやめさせる事に成功しました。

 

『土豆』は競合サイトとの差別化により、3ヶ月でアクセス数が3倍に増え、視聴者増加と広告収入増加で好循環が生まれ、動画サイト大手『優酷(ヨウク)』との合併交渉や、ライバルサイトも一転してテレビ東京に正規配信を打診するようになってきているようです。
テレビ東京の今回の契約では、ミニマムギャランティ(最低保証)の獲得と、『土豆』サイト広告収入の一部が入る事になっています。これにより、テレビ東京の売上高・収益も増え、平成25年第1四半期決算の中期経営計画ではアニメ海外動画配信に重点を置くと発表しました。

 

今回の動きによって、中国の著作権の考え方が変化し始めているようです。それは、著作権を侵害する多くの競合サイトがひしめきあうレッド・オーシャンに位置するよりも、少数のサイトが著作権を守り、お客の支持を得るブルー・オーシャンに位置する方が得だという点でしょう。

 

テレビ東京の奇策は、相手の性格をよく見た戦略と言えそうです。

 

類似例としては、ホンダが、中国のオートバイ偽物ブランドの有力メーカー『海南新大洲摩托』に対して、『天津本田摩托』と新たな合弁会社『新大洲本田摩托』を設立して、地方都市と農村部への参入と日本向け輸出によって、落ち込んでいたシェアを反転させて企業ランキング入りした事例が挙げられます。

 

ここから導き出せるのは、中国側の有力企業と組み、新市場を開拓することで著作権を侵害して成り立っていた既存市場を上書きするビジネスモデルを作るという視点でしょう。

 

更には、日本が創造性を活かして、原案構成や商品設計といった上流を担当し、中国が生産と消費を担当するといった分業体制を築いていくということも有効かもしれません。

 
さて、皆さんがテレビ東京の戦略立案者でしたら、どのようにして海外展開を拡大しますか?



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大前研一
経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。 経営や経済に関する多くの著書が世界各地で読まれている。

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